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ロボットの力で病床から家族に会う体験を。テクノロジーの力でハンディキャップを超越させる高校生【篠部虹人・17歳】

ロボットの力で病床から家族に会う体験を。テクノロジーの力でハンディキャップを超越させる高校生【篠部虹人・17歳】

「気になる10代名鑑」の610人目は、篠部虹人ささべにじとさん(17)。分身ロボットなどを手がける企業でインターンをしながら、病気や障害を抱える人々と交流するロボットを開発しています。友人の母親の病気が転機となったという篠部さんに、いま開発しているロボットのことや日々の日課について聞いてみました。

篠部虹人を知るための5つの質問

Q1.プロフィールを教えてください。

病気や障害を抱える人が、大切な人に会いたくても会えない状況を変えたいという想いから、ロボットの開発に情熱を注いでいます。これまでに、動くことのできない患者さんが、リアルタイム映像を見ながら、簡単に遠隔操作で会いたい人に話しかけるための、『ロボくま』と『ハグボット』というロボットを開発しました。

プロジェクトの傍ら、分身ロボットなどを手がけるオリィ研究所でインターンもしています。めざしている未来が似ていたことから、紹介を受けてジョインしたのですが、プロダクト制作のお手伝いや患者さんへのヒアリングは、ものづくりを勉強する一環となっています」

Q2.活動を始めたきっかけを教えてください。

中学のときから、自走するロボットの開発やプロジェクションマッピングの製作をしていたのですが、完成したものはどれも独りよがりなものばかりで。開発の軸を探しているタイミングで、幼なじみでもあるクラスメイトのお母さんが脊椎がんで寝たきりになってしまうという、ショッキングな出来事があったんです。

お母さんからいただいたメールに綴られた、『ベッドの上から家族と一緒に食卓を囲んだり、授業参観に出席したい』という言葉が、『ロボくま』の開発につながりました。そこから約1か月間、朝から晩まで力を注ぎました。だけど、プレテストの約12時間前というタイミングで、亡くなってしまって……。

とても悲しいことですが、がむしゃらに走り続けた1か月間は、それまでのものづくりと違って、目の前に助けたい人がいるからこそ使命感が突き動かしてくれていたように思って、特別な使命感につながりました。この『僕がやらなくて誰がやるんだろう』という強い気持ちは、いまもずっと続いているものです

 

Q3. いま取り組んでいることは?

「友人のお母さんが亡くなったあとに、開発を始めたのが『ハグボット』です。前身のロボくまに、ぎゅっと抱きしめたくなるハグの要素を加えました。重量、目線など、ロボットを見る人や触れる人が、ぎゅっと抱きしめたくなる形状を研究しています。

これは、ある患者さんの小さいお子さんへのヒアリングがきっかけとなっています。『お母さんと離れ離れになり、スキンシップが取れずに寂しい思いをした』という声が、開発のベースになっています」

 

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Q4. 活動の他に続けていることはありますか?

「今年の春から続けている、毎朝のコールドシャワーです。季節に関係なく、学校に行く前や作業の前に行うルーティンになっています。家族や友人からは『なんでそんなことやるの?』って言われて、理解してもらえないこともありますが。

でもこれは、自分のよくない癖を克服したいと思い始めた習慣で。以前の僕は、中学時代の部活動でも勉強でも、ロボット製作で逃げ出す癖があったのですが、それを変えたいと思って。だからこそ、毎朝自分のケツを叩いてくれるような、“いちばんやりたくないこと”である冷水浴を習慣化することで、自分に勝つ訓練をしようと思ったことが始まりです」

Q5. 今後の展望を教えてください。

「まずは大学に進学して、そこでロボティクスを学びたいと考えています。開発の最前線に立つプレイヤーでいたいとは思っていて、起業も考えています。

加えて、ロボット以外の何かに挑戦することもあると思います。テクノロジーの力で、ハンディキャップを超越した体験を提供することが、僕の使命だと感じていて。だから、ロボットはあくまで、誰かのできないことを“できる”に変えるためのひとつの手段。これまでも、足の指だけで使えるマウスの開発に挑戦したことがありました。

どんな方法であれ、誰かに必要とされることが、生きる意味を感じる、かけがえのない幸福な瞬間であることには変わりないだろうと思います」

篠部虹人のプロフィール

年齢:17歳
出身地:東京都
所属:シュタイナー学園高等部、Beyond Barriers 研究所・代表、株式会社オリィ研究所(インターン)、森のイノーべションラボFUJINO バリアフリープロジェクトリーダー、学生団体MEDIA DESIGN LAB
趣味:温泉めぐり、料理
特技:ポジティブ思考に切り替える能力
大切にしている言葉:NO LIMIT,YOUR LIFE (一般社団法人WITH ALS代表 武藤将胤さんの言葉)

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Photo:Eri Miura
Text:Atsuko Arahata

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