
「気になる10代名鑑」の1064人目は、しとらさん(19)。大学で服飾を学びながら、高校生のときからのテーマである環境問題とファッションの関係について向き合い、ハギレのアップサイクルに取り組んでいます。高校時代にファッションショーを運営する部活で見た大量廃棄のリアルから、アップサイクルに踏み出したと話すしとらさんに、活動の原点となったある児童書や今後の展望について聞きました。
しとらの活動を知る5つの質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「服飾を大学で学びながら、環境問題とファッションの関係について考えています。
これは高校生のころから考えてきたテーマで、これまで、服のリサイクル回収のボランティアにも参加してきました。
高校生のときは、ファッションショーを運営する部活に所属していて。はじめは、ひたすら服を作るのが楽しかったんですけど、次第にまだまだ使える材料の存在が気になり始めていったんです。
たとえば、衣装制作でどんどんたまっていくハギレ、保存が難しくて一回きりで処分する衣装、あとは照明の調整のために使って放置されていた大量の布……。活動で目にする中で、『これってもったいなくない? なんとかできないのかな』と感じるようになっていきました」
Q2. 活動を始めたきっかけはなんですか?
「小学生の時に祖母から『なんでも魔女商会シリーズ』の本をもらって。その本は、着られなくなった服のお直しやリフォームができる魔女が、まちの困りごとを解決していくお話なんです。
もともとファッションは好きなほうだったのですが、つくるのも面白そうって思うきっかけになって。このとき、『自分は服飾に関わる仕事に絶対就くんだ』って決めました。
それに、技術とアイデア次第で、すでにあるものを生まれ変わらせてもっと素敵なものにできるという発想も、この本が教えてくれて。いまの自分が目指したい方向に、無意識のうちにつながっていますね」
Q3. 印象的だった出来事は?
「高校3年生のとき、友達に誘われて、いらなくなった衣服を集めて運ぶ回収ボランティアに参加しました。
すぐに捨てるのではなく、誰かの役に立つ“いつか”を信じて取っておく。そんな人が思っていた以上に多かったんです。もったいない精神は、私だけじゃなくて多くの人の中にあるんだと気づきました。
だったら、SDGsの大切さをいちから訴えるより、その“もったいない”から生まれる工夫やアイデアをいっしょに考えて巻き込んでいく方法の方が届くかもしれない。
誰にどう説明するか。SDGsの活動も作品制作も、『届け方』が大事だと気づきました」
Q4. 最近始めたことはなんですか?
「造形学科の子たちといっしょに、ギャラリーでハンドメイド作品を出しています。いまは、学校の課題との両立で忙しいこともあり、小物を中心に出品しています。
布は必要な分だけ買っても、服を作ったら必ず余りが出るんです。でも、数センチしかないような小さなハギレも、バラみたいに巻いてヘアピンの飾りにしたり、レースと組み合わせたりすると、かわいいんですよ。
実は、この服につけているカフスや、中のレースは、実は高校生の時のハギレを再利用したもので。数年前に余ったものがここで輝けるってわかった瞬間、運命的だなって思いますし、みんなにもその感動をシェアできたらいいなと思います」
Q5. 今後の展望は?
「デザイナー1本を目指すというより、もっと広い視野でファッションに関わりたいという気持ちがいまは強いです。
たとえば最近、『売れないイチゴを染料にして布を染める』という企業の取り組みを知りました。もしその技術と、私の好きな2.5次元アイドルのアパレルブランドがコラボしたらどうだろう……と考えたんです。いちごがテーマのキャラクターがいるから、ファンの“推し活”としても自然に買いたくなるし、同時にフードロスという社会課題にもアプローチできる。
そうやって、誰かをハッピーにしながら、社会問題を考えるきっかけになるような企画も、ファッションが果たせる役割だと思うんです。
将来的には、『もったいない』をテーマに、デザイナーよりも幅広いかたち環境にやさしい服づくりをするブランドを手がけたい。そのために、いまは興味のあることにはなんでも挑戦して、少しずつ経験を積んでいきたいと思っています」
しとらのプロフィール
年齢:19歳
出身:神奈川県横浜市
所属:文化学園大学服装学部 ファッションクリエイション学科、学内企画集団FUSE、学内学生団体colere
趣味:アニメ漫画鑑賞、YouTube、ライブ参戦
特技:糸通し、些細な変化に気づけること
大切にしている言葉:欲しがってばかりいずに今ここにあるものを大切だと思える気持ち(漫画「フルーツバスケット」)
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Photo:Nanako Araie
Text:Chihiro Bandome