Steenz Breaking News

大阪万博でも注目!花粉症の季節の前に、森林大国ニッポンの「スギ」文化について知っておこう【Steenz Breaking News】

大阪万博でも注目!花粉症の季節の前に、森林大国ニッポンの「スギ」文化について知っておこう【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、日本にスギが多く植わっている理由についてご紹介します。

どのくらい困ってる? 若い世代の花粉症事情

楽しいことがたくさんあった年始年末が終わり、毎年恒例のアレの季節が近づくにつれて、だんだんと憂鬱になってくる……そんな人も多いのではないでしょうか。そう、スギ花粉の季節です。

2023年に実施されたシンクタンク「iQ Lab」の調査によると、18歳から29歳の1000名のうち、49.1%が花粉症だということがわかりました。約ふたりにひとりが花粉症ということで、かなり多くの人が花粉に悩まされているのがわかります。

花粉症の何が困るかというと、鼻水や目のかゆみといった症状で集中力が低下してしまうこと。実際に、「花粉症を発症しているとき、あなたの仕事の効率は何点ですか?」という質問に対して、症状がある人の45.5%の人が「仕事の効率が50点以下になった」と回答。花粉症によって多くの人の行動に問題が出ているようです。

日常生活に大きな影響を与えるスギ花粉症。でもなぜ、日本にスギがこれだけ生えているのか知っていますか。その理由を見ていきましょう。

森林大国!スギの木がたくさん植えられているワケ

スギ林 イメージ

日本の国土のうち、約7割を森林が占めているということを学校で習った人は多いのではないでしょうか。そのうち、4割が人工林という人間がつくり上げた森林で、スギ林はその中の4割。つまりは全森林の17%程度がスギ林になっているのです。スギの次に花粉症を多く引き起こすヒノキの森林も、全森林の10%と高い割合です。

なぜ、こんなにスギやヒノキを多く植えたのでしょうか。それは、住宅を建てるのに必要だったから。

時代は第二次世界大戦後にさかのぼります。戦争からの復興により、住宅などの建設のラッシュが起こりました。しかし、建物の柱となる木材が足りないという事態が発生。そこで、柱材として利用しやすい針葉樹のスギやヒノキが、大量に植樹されたのです。

しかしながら、スギやヒノキの木を柱として利用できるようになるまでには、少なくとも30~40年という長い年月がかかります。その間に木材が自由に輸入できるようになったり、木造建築が減ったりと、スギやヒノキの需要が減ってしまいました。1955年には90%以上だった木材自給率はどんどん減り続け、2000年には過去最低の18.8%まで落ち込みました。

伐採するにもお金がかかるので、売れなくなった木は、その多くが放置されるという事態に。スギやヒノキは生きているので、その間も成長を続けますし、春になれば花をつけ、花粉を放出します。そうして、スギ林やヒノキ林は、適切に伐採されることなく、花粉をまき散らす迷惑な存在ということになってしまったのです。

そんな中、無花粉なスギの品種が開発され、ニュースでも話題になっています。ただし、いま生えている木を切り倒し、植林しなければならないため、膨大なコストがかかります。無花粉な品種が開発されたからといって、すぐに問題解決とはならないのです。

一方で、木材の自給率を上げようと国や林業界が取り組んできたことも事実です。コロナ禍で木材の輸入がストップしたことで、国産の木材が見直されたり、建築関連の法改正によって、高層ビルなどにも木材が使えるようになったりなどもありました。その結果、2022年の木材自給率は40%にまで回復しました。

2024年時点でも、都内にいくつもの木造高層ビルの建築予定がありますし、ニュースになっていますが、大阪万博のシンボルといわれている「大屋根」でも、国産のスギやヒノキが使われると宣伝されていますよね。このように、多くの場面で木材が使われ、新たに無花粉のスギを植えたり、スギ以外の木を植えたりすることで、花粉の量は減りますし、カーボンニュートラルな面でもいい影響が生まれるでしょう。

スギとうまく付き合っていこう

いまでは少なくなっていますが、線香や割りばしなども、元々はスギでつくられていました。醤油や味噌をつくる際に使われる木桶・樽も、スギでつくられていることが多かったそうです。加工がしやすいスギは、日本人にとってすごく身近な素材であり、そしていまでもスギの利用を支えてくれている人もいます。花粉症があるために、つい厄介者に思われがちなスギですが、ぜひ生活に溶け込むスギを探してみてくださいね。

Reference:
2023年の春だけで、若年層の経済損失は約2.1兆円。深刻化するZ世代の花粉症問題。
林野庁「スギ・ヒノキ林に関するデータ」
林野庁「林業白書 第1部 第4章 第1節 木材需給の動向(2)」

Text: Itsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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