「気になる10代名鑑」の558人目は、來々さん(19)。社会問題や自分の考えなどをダンスで表現しています。将来的には社会にダンスを浸透させる活動をしたいという來々さんに、影響を受けた作品や将来の展望についてお話をお聞きしました。
來々を知る5つの質問
Q1. いま力を入れていることについて教えてください
「踊りを通して、社会問題やわたしたちの世代の悩みなど、いろいろなことを表現しています。
踊りって、体で表現する以前に、考えなくてはいけないことがたくさんあると思っていて。もう10代も終わりに近づいているので、政治や歴史、芸術について、自論をもっていたい。それが作品に影響することもたくさんあるんです。
ダンスには、鍛えられた身体や、技術そのものを楽しんで鑑賞するという方法もあると思うのですが、わたしはダンスを通して、社会問題や、自分を含む、多くの人が抱える悩みを投影した作品を生み出したいんです」
Q2. 活動を始めたきっかけを教えてください
「中学生までは普通の人生を送っていたし、勉強も苦手じゃなかったので、それなりに進学して、安定した職に就いて……といった人生を歩んでいくのかなと思っていたのです。でも、なんだか退屈だな、と感じてしまって。勉強する環境を整えてくれるのはまわりの大人たちで、自分だけの力じゃない要素も大きいのに、それだけが自分の評価になって、人生が決まってしまうのに違和感を感じたんです。
当時は、『勉強をする以外だったら、芸術をやるしかない』という考えがあって。以前、踊りをやっていた経験もあったので、都立の芸術高校に踊りを見学しに行って、そこで度肝を抜かれたのが、本格的に踊りをはじめたきっかけです」
Q3. 創作活動に影響を与えた「人」を教えてください
「たくさんの人から影響を受けていますが、特に井上涼さん、庵野秀明監督、そしてピナバウシュの3人から、すごく影響を受けました。
井上涼さんは、歌ったり、映像を作ったり、とにかくいろいろなことをやられている人で、まだアートのことを全然知らない小学生のころに、むさぼるようにして見ていました。この人との出会いが、芸術意識の芽生えだったと思います。
庵野秀明監督は、つくりだす世界観が大好き。創作には、完全に新しいものをゼロから創り上げるタイプと、インプットした情報を組み合わせて、作品を作るタイプの2種類あると思っていて、自分自身は後者のタイプだなと思っているのですが、庵野秀明監督は両方できるのがすごい。わたしも努力を続けて、いつかは両方の創作方法を使いこなせるようになりたいです。
ピナバウシュは、踊りをやっている人みんなの憧れだと思います。『夢の教室』という、地元の小学生たちにプロと同じ環境を与えて、作品をつくるというドキュメンタリーを見て、憧れました。踊りを通して社会に貢献することをめざすわたしのお手本になる人だなと感じました」
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Q4. 社会へのビジョンがあれば、教えてください
「ダンスがもっと開かれた世界になって、もっとたくさんの人が触れるようになってほしい。人間が人間である理由や、その価値を見出せるのが芸術だと考えているので、芸術に触れる機会はみんなに平等に与えられるべきだと思うんです。だからこそ、いろいろな表現方法に触れることが大事だと思うんですが、ダンスはまだ閉ざされているから。
心で感じることだけではなく、体が自分と場所をつなげているという認識を持つことも大切だと思っていて。自分と世界をつなぎ止めている唯一の存在である体の感覚を研ぎ澄ませることは、自分を見つめ直すことにもつながると思うので、もっと多くの人が、踊りという芸術に触れ合ってほしいです」
Q5. 将来の展望について教えてください。
「やりたいことは、社会にもっと踊りを浸透させること。でも、自分のやりたいことを突き詰めていくのと、社会貢献を両立させるのは、なかなか難しいことのような気がしていて。アーティストそれぞれにやりたいことはあると思うし、それが評価されることももちろんありますが、自己満足で終わってしまうことも多いんです。
わたしはダンスを通じて社会とつながっていたいと思うので、自分のやりたいことより、社会に対して貢献することを優先させたいと考えています。
ひとまず大学生のうちは、学生という立場に甘え、とにかく自分のやりたいことをやって、そこで得た経験や考えを、ダンスを普及させる活動に還元したいです」
來々のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都三鷹市
所属:日本大学芸術学部演劇学科
趣味:寝ること
特技:ダンス
大切にしている言葉:逃げちゃダメだ
來々のSNS
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Photo:Eri Miura
Text:Kanon Yoshizumi