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人口の2倍の移民が押し寄せたら…どうする?伊・ランペドューサ島に押し寄せる移民たち【Steenz Breaking News】

人口の2倍の移民が押し寄せたら…どうする?伊・ランペドューサ島に押し寄せる移民たち【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカから多くの移民がヨーロッパへ向かっているという現状について、ご紹介します。

あなたの住む街に人口の2倍の移民が押し寄せてきたらどうしますか?

先月、「絶景の島」として観光客で賑わう、イタリア最南端のランペドューサ島に、たった1週間で、島の人口の2倍を超える1万2000人の移民が上陸しました。船の多くはチュニジア発で、ギニアやコートジボワール、マリといった西アフリカからの移民が多く乗っていました。

アフリカからヨーロッパに渡る移民は年々増加し続け、国連難民高等弁務官事務所によると、2023年6月までに海路でイタリアに上陸した人は6万人を超えました。特にこのチュニジアからイタリアをめざして地中海を渡るルートは、別名「死のルート」とも呼ばれ、今年に入ってからだけでも1000人以上が命を落としています。

 

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生き地獄より一度きりのチャンスを

なぜ、西アフリカの人々は、このような危険を冒してまで、ヨーロッパへ渡ろうとするのでしょうか。

筆者がガンビアを旅していたとき、西アフリカからヨーロッパに渡る人を乗せる船に乗ったことがあります。「手づくり」という言葉以外では表現することが難しいような木製の船は、海路を10日間近く旅するにはあまりにも脆い見た目をしており、波の少ないガンビア川を渡るだけでも怯えてしまうほどでした。

一緒に船に乗ったガンビア人の友人は、この船に乗ってヨーロッパに渡った幼馴染がいるといいます。

 

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経済が発展しておらず、人口の約半数が1日1.25ドル以下の生活を送っているガンビアにおいて、多くの若者が「仕事もなければ、希望もない」という状況にあります。彼らは自分の生まれ育った国で生き地獄を経験するくらいなら、一度きりのチャンスで、平均月収が10倍も超えるヨーロッパに渡り、人生を変えたいと願うのです。

しかし、夢を抱いてこの船に乗った若者の中には、危険な海路で命を落とすケースも多いのです。わたしの友人も、幼馴染を亡くしたと話していました。

制御不能な絶景の島

一方で、地中海に浮かぶランペドューサ島では、ひっきりなしに押し寄せる移民を制御できなくなっています。同時に、移民による治安の悪化や雇用が奪われることを心配し、イタリアだけでなくヨーロッパ各地で、半移民派や極右政党が勢力を伸ばしています。

しかし、移民の受け入れは国に悪い影響ばかりを及ぼしているというわけではありません。

西ヨーロッパの15カ国の30年間の移民と難民を研究した、フランス国立科学研究センター(CNRS)パリ経済学校の経済学者、イポリート・ダルビス(Hippolyte dʼAlbis)博士は、2018年に発表した論文で、「移民と難民の受け入れは経済に好影響である」と論じています。

その理由は、移民や難民の多くは高齢者よりも生産人口が多く、市場の需要を増やすためです。彼らはサービスを提供し、仕事を増やし、税金を払うため、結果的に「移住者を歓迎しないほうが経済は悪化する」と述べました。

そうした背景や、人道的な観点もあり、先月、EU委員長とイタリアのメローニ首相はランペドューサ島を訪問し、「合法的な移民をもっと受け入れ、密入国を減らす」という行動計画を発表しました。

 

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深い歴史から見る国際間の課題

人の命を利用した密航ビジネスも存在し、アフリカからヨーロッパに渡る移民や難民は絶えません。いまもなお、ヨーロッパによるアフリカへの経済的な植民地支配が続き、アフリカ諸国が完全に自立できない現実があります。それと同時に存在する、美化されたヨーロッパへの憧れ。こうした背景が変わらない限り、彼らが移民となりざるをえない状況は続きます。世界としても、直面する問題として、移民や難民に対して、人道的な対応を取るべきなのではないでしょうか。

Reference:
NPR「On Lampedusa, there’s sympathy for migrants — as long as they don’t stay」
United Nations 「60,000 young refugees and migrants who arrived in Italy alone lack support」
IOM「Deadliest Quarter for Migrants in the Central Mediterranean Since 2017」
WFP「Republic of The Gambia Zero Hunger Strategic Review 2018」
Nature「Migrants and refugees are good for economies」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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