「気になる10代名鑑」の517人目は、行人さん(17)。自分や風景の中にある“美しさ”を表現しようと、音楽やお芝居などに取り組んでいます。スルーされてしまう社会の問題や自然の音に耳を傾けるような表現をめざしているという行人さんに、活動を始めたきっかけや、影響を受けた出会いについてお話を聞いてみました。
行人を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を注いでいる活動について教えてください
「音楽やお芝居など、さまざまな方法で、自分や風景の中にある“美しさ”を表現しています。
最近は特に、音楽で表現をすることが多くて、周囲の音を録音して、それにエフェクトをかけたり、機材をいじりながらギターの音の変化を聴いてみたりしています。それを即興ライブでやることにこだわっていて、生み出される音やお客さんの反応が毎回違うのが面白いです。
また、小学6年生から中学2年生まで、コメディをする演劇団体に所属していたこともあり、たまにお芝居もやっています。最近だと、学校の授業の中で台本を書き、音響や映像も生徒たちで担当して、劇を上映しました。
バンド活動もやっていて、『存在』というバンドで、高校の軽音部が集まる大きめなライブに出演したり、『眼鏡沢』というユニットで武蔵野市の地域のイベントに出演したりしています」
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Q2. 活動をしようと思ったきっかけを教えてください
「もともと音楽が身近だったことが大きいです。父が社会人バンドでベースをやっていて、音楽の機材が家にたくさんあったり、姉と妹がミュージカルをやっていたりと、家族がみんな音楽好きで。自然と音楽に興味を持つようになりました。
ミュージカルを観ているうちに、自分も演者をやってみたくなり、地域の演劇団体に入りました。先生は厳しかったけど、そのぶん、達成感もあって。ステージが終わったあとに、お客さんが感想を伝えに来てくれたのは、とても印象的な体験でした。
楽器を始めたのは、ジャズピアニストのビル・エヴァンスのドキュメンタリー映画を観て、ピアノを弾いたことがきっかけです。自分の人生の転換点ともいえるほどのドキュメンタリーだったのに、ピアノの音が心地良くて途中で寝てしまうほど、素晴らしい音楽を奏でる人なんです。基礎を習い始めてすぐの段階でコロナ禍が始まったので、そこからはすべて独学でやっています」
Q3. 影響を受けた出会いはありますか?
「どの人との出会いからも影響を受けていますが、まだ出会っていない人たちの存在も忘れたくないなと考えています。もしも、これまで出会ってこなかった人に出会っていた人生だったら、いまの自分とはまったく違った自分ができあがっていたはず。そういった意味で、出会わなかった人の存在も重要だなと考えています。
最近、星野源さんが『先が見えないことがいちばん楽しい』ということをおっしゃっているのを知ったのですが、この言葉との出会いも、自分に影響を与えていると思います。この言葉は、先が見えているということは、過去に誰かが通ったことのある道ということを意味していて、先が真っ暗ということは、誰も成し遂げていないことをやろうとしているから楽しいんじゃないか、という意味を持っているんです。すごくかっこいいなと思ったし、自分にも憧れの人はいるけど、その人とまったく同じことをしたいわけではないので、共感もできる言葉だったんです」
Q4. 社会に対して「こうなってほしい」というビジョンはありますか?
「もっといろいろなことを“観る”、“聴く”という姿勢をもった社会になってほしいと思っています。注目しないといけない社会問題や、聞かないといけない声、そして自分が好きな情報ばかりを追いかけることで、自然の音をスルーしてしまっているような気がしているんです。
だからこそ、自然の音やノイズを、音楽に取り入れていて。そうすることで、聞かれなくなってしまった“音”に、もっと耳を傾けてくれたらいいなと考えているんです。今後はお芝居でも、この問題に向き合いたいです」
Q5. 将来の展望について教えてください
「とにかく創作活動を続けたいです。いまもいろいろな活動をしていますが、もっとなにかできるんじゃないか……とか、もっと別の方法で表現できるんじゃないか……とか、ずっとモヤモヤしているんです。
だけど、星野源さんの『先が見えないことがいちばん楽しい』という言葉のように物事をとらえて、悩んで立ち止まるだけではなく、作品を通して自分の内面をアウトプットする活動を続けていきたいと思っています」
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行人のプロフィール
年齢:17歳
出身地:東京都三鷹市
所属:自由の森学園高等学校、眼鏡沢、存在、集団A
趣味:パスタづくり
大切にしている言葉:見えないから観ようとするんだ 聞こえないから聴こうとするんだ
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★note
Photo:Eri Miura
Text:Kanon Yoshizumi