「気になる10代名鑑」の441人目は、山内彩さん(17)。アプリ開発のイベントで出会った仲間たちと団体を設立し、セクシャルハラスメント防止のためのアプリをリリースしました。アジアにおける女性の権利侵害に問題意識をもつ山内彩さんが活動を始めた1歩目のアクションや、今後の展望についてお聞きしました。
山内彩を知る5つの質問
Q1. いま取り組んでいる活動について教えてください。
「フィリピンやネパール、そして日本の高校生や大学生10人ほどで『SafeBuddy』という、セクシャルハラスメント撲滅をめざす団体を設立しました。
いまは“見えない社会問題をテクノロジーで見える化する“というビジョンのもと、学生のためのセクハラ防止用のアプリの開発に携わっています。去年リリースして、現在はバグを直すために停止していますが、機能の改善に向けて努力しています」
Q2. 活動を続ける中で印象的だった出来事について教えてください。
「昨年の8月にSafebuddyとして企画し、運営した『girls4asia』です。そこでは、アジアのいろいろな国の人たちと、女性の権利侵害やセクハラ問題について話し合うことで、問題意識を共有できたんです。アジアの国の中には、生理になると檻に入れられるような国もまだ存在していて、ひと言で女性の権利侵害といっても、いろいろな現状や格差があることもわかりました。
また、『SafeBuddy』ではいろいろな国のメンバーたちと活動しているのですが、国民性によって、価値観が合わずに苦労することもあります。例えば日本では時間厳守が鉄則ですが、ネパールの人は時間に無頓着だったり……。でも、そこで怒ったり否定したりせずに、逆にいい部分や得意なことは必ずあるので、そこを認めることで、活動もスムーズになるんです。それはすごく大きな発見でした」
Q3. 活動をする中で、壁に感じたことがあれば教えてください。
「最初は、利便性の高いアプリがあれば、セクシャルハラスメントの防止に十分役割を果たしてくれるのではないかって、単純に考えていたんです。
でも、問題の性質上、被害を受けている人が情報提供を行いにくいから、いくらアプリがあっても、心の傷には寄り添えないって気づいて。テクノロジーを通して、心の傷に寄り添うなんてできるのかな……と悩んでしまいました。
なのでいまは、アプリ開発だけじゃなく、人に寄り添える人権政策の提案と新しいテクノロジーを組み合わせることで、被害の防止だけでなく、被害者の心に寄り添えるような解決策を見つけたいと考えています」
Q4. いまの自分に影響を与えたものを教えてください。
「カミュの『ペスト』という小説です。わたしは『人とどう共感するか』を信念にしていて。共感があれば、他人が抱えている痛みや問題を、自分のことのように捉えられると思うんです。その想いを言語化してくれたのがこの本でした。
『SafeBuddy』の活動でも、ニーズを理解するためには、人の経験に共感する力がすごく必要で。いまはいろいろな社会問題がありますが、社会のひとりひとりが共感しあえば、少しずつでも解決に向かうんじゃないかと考えています」
Q5. 今後の展望について教えてください。
「将来は、政治家や政策アナリスト、国際的な研究者の道に進むことを考えています。信念である“共感“をベースに、『SafeBuddy』の活動の軸にある、学生やこどもの人権に関する政策づくりに関わりたいです。
具体的には、発足したばかりのこども家庭庁で、子ども目線の政策づくりがうまくいくように、子どもと大人の連携がスムーズに進むような環境設計にも興味をもっています」
山内彩のプロフィール
年齢:17歳
出身地:神奈川県
所属:SafeBuddy
趣味:楽器演奏(バイオリン)
特技:世界中の国の国旗がわかる
大切にしている言葉:One must imagine Sisyphus happy” (アルベール・カミュ)
山内彩のSNS
この投稿をInstagramで見る
★HP
Photo:Eri Miura
Text:Kanon Yoshizumi