「気になる10代名鑑」の352人目は、浅見さん(19)。大学で受けた授業をきっかけに視覚障がいに興味をもち、現在はオリジナルで開発したボードゲーム制作を軸に、視覚障がいのある人とない人が一緒に楽しむ接点をつくっています。そんな浅見さんに活動のこと、これからの目標について聞いてみました。
浅見を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れていることは何ですか?
「ビーラインドプロジェクトで、『見ても見なくても見えなくても楽しめるもの』をつくる活動をしています。いまは視覚障がいのある人とない人が一緒に楽しめるボードゲーム『グラマ』を開発しています。
この『グラマ』というゲームは、触感と表現力を頼りに、配られる袋の重さをそろえるというルールで、勝ち負けはありません。4人のグループをつくって、カードのお題に合わせて、自分の袋の重さを言葉で表現していきます。お題のカードは、物理的な重さがテーマのときもあれば、感情など抽象的なテーマもあります。最終的にはそれぞれの袋を天秤に乗せて、釣り合ったら成功。そのためにはかなりコミュニケーションをとって、重さの認識をそろえていく必要があるんです。
現在は盲学校や小学校などで実際に遊んでもらったり、体験会イベントを定期的に開催したりしています。また、渋谷ヒカリエで開催された『超福祉展』に出展したり、若者のプロジェクト支援を行っている『100BANCH』で活動したりもしています」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「きっかけは、大学1年生のときに受講した福祉の授業。そこで視覚障がい者の方の話を聞いたんです。視覚障がいを抱えている人の生活が、自分の生活とはまったく異なっていることに、衝撃と葛藤を感じて……。
その後、いろいろと視覚障がいについて調べていく中で、『もし自分が目が見えない人と遊ぶとしたら、どうやって一緒に遊べるんだろう』と疑問を持ちました。自分の幼少期を思い返してみても、目の見えない人と一緒に遊ぶ機会って、全然なかったなと思って。それに、いまもエンタメや遊びのほとんどが、視覚を前提としているものが多いじゃないですか。
そこで、インターン時代に知り合った仲間に声をかけて、プロジェクトを立ち上げたんです。その活動の第1弾として、ボードゲーム『グラマ』の開発に取り組みました」
Q3. 続けている中で、印象的だった出会いはありますか?
「昨年の4月、全盲の大人の方と、視覚障がいのない小学生の子どもたちに、『グラマ』を遊んでもらったときのことが印象深くて……。最初は初めて接する全盲の大人たちの前で不安そうにしていた子どもたちも、一緒に遊んでいくうちに、仲良くなっていって。帰るころには満面の笑みでハイタッチしたり、あだ名を呼びあったりしていました。
ハイタッチといっても、目が見えない人とするのは意外と難しいんです。だけど、子どもたちは一緒に遊んでいく中で、そういったことも理解していて。だから『ハイタッチしよう!』と言ってから、力強くハイタッチしていたのがとても感動的でした。
このイベントを通じて、『こういう瞬間がもっといろいろなところで生まれたら、最高なんじゃないか』と確信し、視覚障がいのある人とない人が、一緒に楽しめる接点をつくることに、さらに意欲的になりました」
Q4. 自身の考えや活動に影響を与えた存在は?
「僕たちのロールモデル的存在の『世界ゆるスポーツ協会』で代表理事をされている澤田智洋さんから、たくさんの影響を受けました。澤田さんは目の見えない息子さんがいらっしゃって、『マイノリティデザイン―弱さを生かせる社会をつくろう』という本も出版されているんです。
もともとコピーライターとして活躍されていた方ということもあって、上品さとポップさのある言葉がとても素敵で。澤田さんの言葉を読むたびに、自分もこんな素敵な言葉を贈れるようになりたいな、と思っています」
Q5. 活動を通して、社会や未来に実現させたいビジョンがあれば、教えてください。
「僕たちが掲げる『#見ても見なくても見えなくても楽しめるを増やして一緒にワクワクする世界へ』をひたすら追いかけ続けていきたいです。理想は、視覚障がいのあるなしに関係なく、みんなで一緒に楽しめるものや楽しめる場所がいろんなところにある社会。『グラマ』はそのひとつに過ぎません。
また、インクルーシブデザインについて、より多くの人に興味をもってもらいたいです。特に同世代だと、まだまだ福祉とかの分野って難しそうとか、意識高そうっていうイメージがあると思うので。思いどおりにいかないこともたくさんあると思いますが、そういった困難も、仲間と一緒に楽しんで乗り越えていけたらいいなと思っています」
浅見のプロフィール
年齢:19歳出身地:東京都昭島市所属:立教大学文学部、ビーラインドプロジェクト、認定NPO法人very50インターン趣味:写真、食事、藤井風を聴くこと大切にしている言葉:一期一会
浅見のSNS
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Photo:Eri MiuraText:Ayuka Moriya