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神宮外苑の樹木を救いたい!経済発展と環境保護…どちらも犠牲にしない道を探る【楠本夏花・19歳】

神宮外苑の樹木を救いたい!経済発展と環境保護…どちらも犠牲にしない道を探る【楠本夏花・19歳】

気になる10代名鑑」の300人目は、楠本夏花なつかさん(19)。神宮外苑の樹木伐採を止めるために、署名活動をおこなっています。高校時代の留学などを経て、社会問題に対してアクションを起こすことへの障壁がなくなったという楠本さんに、活動にかける思いや、印象的な出会いについて聞いてみました。

楠本夏花を知る5つの質問

Q1.いま力を入れている活動について教えてください。

東京都神宮外苑でおこなわれる予定の『神宮外苑地区再開発計画』の、根本的見直しを求める署名活動をしています。この計画では、神宮外苑のいちょう並木を含む約600本以上の樹木が、高層ビルやスポーツ施設などの再開発を理由に伐採されることとなっているんです。

この計画を承認する都議会に対して、反対の署名を集めていたんですが、当初の予定だった1000本を600本に減らすことができたものの、許可は下りることになりました。一見すると、成果があったのようにも思えるんですが、事業者の発表を読み解くと、このうちのほとんどは立ち枯れる予定だった木が含まれていたので、元気で残されるのは85本だけ、ということになっています。東京都がGOを出してしまったいまは、事業者に向けて、オンラインと神宮外苑・大学などで署名活動をしているところです」

 

 

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Q2.活動を始めたきっかけはありますか?

社会問題に対してアクションを起こしたのは、高校での学校新聞の同好会の設立と、アメリカに留学していたときの文化交流イベントが大きなきっかけです。

日本ではBlack Lives Matter運動、そして留学先ではコロナ禍でのアジア人差別……それぞれに影響を受けて、『いますぐ何かしなくちゃ』って強く感じて。こういった差別の問題は、無知から起こるものだと思ったので、新聞やイベントを通じて、お互いのことを知ってもらおうと思いました。

この経験を通して、やっぱり行動しないと社会は変わらないっていうことに気づきました。社会に対する思いや怒りを実際のアクションに起こすとき、最初は抵抗や戸惑いみたいなものがあったけれど、帰国後には一切感じなくなったんです。

神宮外苑の樹木伐採について活動を始めたのは、一昨年の2月に、ローマに住む叔母から、東京での署名活動に協力してほしいと頼まれたのがきっかけ。同級生に相談したところ、協力してくれる子が何人かいて。話を聞いてから3日後くらいには、みんなで外苑前で街頭署名活動やビラ配りを始めました」

Q3. 活動を通して印象的だったことはありますか?

署名活動中に、散歩中のおばあさんから、『声を上げてくれて本当にありがとう。私は何をすれば良いかわからなかったの』と声をかけてもらったことです。

声を上げたくても、どうすればいいかわからない。そんなひとが思っているよりたくさんいるんじゃないかな。デジタルネイティブとも言われているZ世代は、SNSで簡単に声を上げることができるはずだけど、わたしたちは、その利点を生かしきれているのかなって思っていて。

それに実際のところは、行動を起こせば起こすほど、社会はまったく変わらない……と、無力感に悲しくなるときもあります。でもそんなとき、叔母がくれた『社会を一気に変えようとしなくていい』という言葉を思い出します。

おばあさんのあの言葉をかけられたときは、『声を上げてよかったな』とつくづく実感しましたし、小さな声を拾い上げて、絶対に届けるんだという使命感も一層強くなりました」

Q4. 活動をするなかで、苦悩や困難はありますか?

この活動は、どの政治色もつけずに活動しているつもりですが、『声を上げる=特定の政党と繋がりがある』と認識されてしまい、それについての誹謗中傷が多いこと。また、就活のための話題作りだとか、若者を客寄せパンダに使っているという批判的な目線で、活動自体を真剣に捉えてくれない声もあります。

でもそうやって批判してくる人に言いたいんですけど、再開発自体に反対しているわけではなくて。人間が生活していく以上、経済発展を止めることはできません。まったくの白紙にしたら、そのひとたちの仕事を奪うことになるだろうし……。企業とわたしたち、お互いが納得できる妥協点を探していきたいだけなんです。

だから、社会に対して思うことがある限り、わたしは堂々と声を上げ続けたいなって思っています」

 

 

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Q5.将来の夢を教えてください。

「大学に入学したときはジャーナリストになりたかったんですが、こういう活動をしてきたので、偏りなく報道しなければいけないのがちょっと辛いなって……(笑)。なので、ジャーナリストにならないとしても、何か言葉を通して、勇気を与えたり社会を変えたりできたらなって思います。

イチョウ並木保護の活動がひと区切りついたら、次は東京都内のいろんな再開発について、何か取り組めたいです。わたしが理想としている『小さな声に耳が傾けられ、それが反映される社会』を実現するために、積極的に働きかけしていけたらと思います

楠本夏花のプロフィール

現在の年齢:19
出身地:東京都
所属:上智大学文学部新聞学科
趣味・特技:アルペンスキー
大切にしている言葉:「あなたの行動がほとんど無意味であったとしても、それでもあなたはしなくてはならない。 それは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」 (ガンジーの言葉)

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Photo:Eri Miura
Text:Atsuko Arahata

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