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タイでの大麻規制緩和。実際どうなの?現地での受け止められ方【Steenz Breaking News】

タイでの大麻規制緩和。実際どうなの?現地での受け止められ方【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、タイの大麻規制緩和の動きについて、現地での受け止められ方や日本における影響などをご紹介します。

世界的に注目を浴びたタイの麻薬規制緩和

世界的なニュースにもなった、タイにおける大麻の規制緩和。医療目的での使用のみならず、食品・化粧品などでの商業利用も拡大しており、今後も市場の成長が見込まれています。

ここ日本でも、医療用大麻を解禁する方針があることから、タイの大麻関連市場には、注目が集まっています。

バンコク各地で大麻店がオープン、ただし娯楽利用は禁止

タイ政府は2019年、医療・研究目的の大麻利用・栽培を合法化。2021年には、食品・飲料・化粧品での商業利用も許可しました。そして2022年6月9日には、大麻が規制薬物のリストから除外され、家庭栽培も解禁されています。

その背景には、貧困から脱却できないたばこ農家に大麻の転作を促し、収入拡大を図るという目的があります。

これを受けて、首都・バンコクの街中では、大麻や大麻関連商品を取り扱う販売店が相次いでオープンしました。販売店のオーナーは、「8月のウェブサイトのアクセス数が、5月から比較して2倍になった」と話します。食品・飲料会社も、大麻草の成熟した茎や種子のみから抽出・製造されたCBD(カンナビジオール)を使った商品を次々と販売しています。

ただ、解禁されたのはあくまでも医療などを目的とする使用や栽培。娯楽目的での使用は認められておらず、公共の場で大麻を吸引することなども禁止されています。

日本企業も市場に関心寄せる

タイに限らず、世界では医療用大麻を合法化する動きが進んでおり、日本も例外ではありません。9月には厚生労働省の専門家委員会が開かれ、「医療用大麻の解禁」をはじめとする大麻取締法などの改正の方向性が取りまとめられました。

もともと大麻は、日本を含む世界各地で漢方薬などとして用いられていました。脳の中枢神経に影響を及ぼし、依存症になるリスクが高いことから、娯楽用での使用を禁止している国が大半ですが、がんの治療をはじめ、てんかん、神経性難病の鎮痛など、大麻での治療が適応できる疾患も多く、各国の医療現場で利用が拡大しています。

こうした状況下で、タイの大麻関連産業に関心を寄せている日本企業もあります。大麻草の一種であるヘンプやCBDの研究及び製品開発をするC&H株式会社(本社:東京都渋谷区)は9月、来日したタイ工業省の関係者らと、在日タイ大使館で交流会を行ったと報告しました。

10月に発表したリリースでは、「タイでは既に、ヘンプの繊維を使ったさまざまなプロダクトの研究がされており、衣類、プラスチックや車体などの複合材、ゴム、飼料・餌など、幅広い活用が見込まれています」と指摘しており、「同国の食品・化粧品メーカーの大手企業による数億〜数十億の投資が行われており、今後さらに拡大が加速していくと予想されます」と述べています。

現地では10代の娯楽目的使用への懸念も…

ただ、タイでは大麻に関する法整備が遅れており、大麻を娯楽利用する若者や外国人旅行者への懸念が高まっているのも事実です。外国人旅行者が多く集まるバンコクのカオサン通りでは、事業許可を得ていない露店でも大麻が販売され、誰でも手軽に購入できる状況となっています。

中毒研究センターのラッサモン所長も、「大麻が規制薬物のリストから除外されて以降、大麻を娯楽利用している20歳未満の若者が倍増している」と指摘し、「大麻規制緩和の影響を注視する必要がある」との懸念を示しているとタイの地元メディアが報じています。

この他にも、大麻を吸引した酩酊状態で車を運転をすることで、交通事故のリスクが拡大する恐れも指摘されています。

日本への大麻持ち込みはダメ!ゼッタイ

日本人も、タイでの大麻の取り扱いについては、十分に注意する必要があります。在タイ日本大使館は、タイに住む日本人や日本人旅行者に対し、下記のような注意喚起を出しています。

「日本では大麻取締法に基づき大麻の所持等が禁止されており、日本に大麻を持ち込もうとした場合等には同法による処罰の対象となります。また、国外において大麻をみだりに、栽培したり、所持したり、譲り受けたり、譲り渡したりした場合などに罰する規定があり、罪に問われる場合があります」

「日本及びタイの法令を遵守の上、トラブルに巻き込まれたり、御自身の健康を損ねたりすることがないよう、安易に大麻に手を出さないように御注意ください」

世界中から注目が集まっている大麻産業ですが、国によっては所持しているだけで無期懲役などの重罪が科されることもあります。大麻が簡単に手に入る状況であっても、安易に購入したり、使用したりすることは避けましょう。

Reference:
C&Hが大麻解禁後タイのCBD・ヘンプ市場の現状調査、タイ政府との交流会を実施
タイにおける大麻規制等について|在タイ日本国大使館
タイの大麻に関する規制緩和(注意喚起)|在タイ日本国大使館

Image:PR TIMES
Photo&Text:Risako Hata

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Risako Hata

ライター

タイ在住のジャーナリスト。共同通信系メディアにて5年のタイ駐在を経て独立。現在は、アジアの経済や人道問題、SDGsに関連する記事を執筆。

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