
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、神奈川県川崎市の企業がおこなうサステナブルな取り組みについてご紹介します。
多様化するアップサイクル製品
アップサイクル製品が、わたしたちの暮らしの中に徐々に広がりつつあります。「アップサイクル」とは、廃棄予定のものや不用品にデザインやアイデアなどの新しい付加価値を加え、元の製品よりも価値の高いものに生まれ変わらせて再利用すること。廃棄物を素材として再利用するリサイクルとは異なり、工夫をして新しい製品へとアップグレードさせる点が特徴です。
アップサイクルというと、廃棄される衣類や食品を生まれ変わらせる、というイメージをもつかもしれません。しかし最近では、役所や学校で見かける意外なアイテムもアップサイクルされているのです。
横断幕が、普段使いできる雑貨に!
7月1日、神奈川県川崎市で、レザーアイテムの企画・設計・製作を中心にアップサイクルアイテムの企画・製作もおこなう株式会社SKLO(以下、SKLO)が、ある材料でできた製品の販売を開始しました。その材料というのが、川崎市の市政開始100周年を記念して作られた横断幕です。
この横断幕は、2024年に作られたもの。よく見ると、表面には横断幕にプリントされていた文字やマークが。また、四面体のような印象的な形をしたポーチは、小物をサッと出し入れできるようにこの形状を採用したそうです。デザインだけでなく、機能性も考えて設計されているのは嬉しいですね。その上、素材がターポリンということもあり、耐久性に優れ水にも強いため、幅広い場面で使用できるのではないでしょうか。
また、日本伝統のあづま袋や巾着袋の「折る」「包む」技法などを参考にしたことで、素材を無駄なく使うことができたそう。アップサイクルをおこなう際、材料が必要以上に増えてしまったり、エネルギーを想定以上に消費してしまうといった課題が生じることもありますが、そうした課題を軽減しながら、横断幕を新しいアイテムに生まれ変わらせることができたようです。
今年の市政101周年記念日である7月1日には、川崎市役所本庁舎の1階にあるアトリウムにて、製品展示や販売、ワークショップもおこなわれました。ワークショップでアップサイクルを体験できたことにより、市民の意識や行動に変化を促すきっかけにもつながったことでしょう。ちなみに当日は、先着101名に製品と同じ素材で作られたタグも配布されたそうです。
株式会社SKLOのサステナブルな取り組みはほかにも
SKLOでは、横断幕のアップサイクル以外にも、多様な取り組みをおこなっています。
例えば、革製品の製造過程で出る「床革(とこがわ)」を活用したコ-スター。床革とは、革の銀面層(表面)を削ったときに出る副産物です。これまでは、加工する手間や時間、コスト面での負担を理由に、廃棄されることが多い部位でした。しかし、SKLOは廃棄量の削減や環境配慮を考え、床革のアップサイクル製品の製造を決意。クラウドファンディングで専用機械の購入費を集め、実現に至りました。
そしてもうひとつは、プラスチックボトルの削減やマイボトルに関する問題解消を目指した、本革ボトルホルダーの製作です。現在、プラスチック問題解決の一案として推奨されているマイボトルですが、何らかの理由で「持ってはいるが、使用していない人」がいることも事実。そのような人々が抱える、マイボトルを使用しない理由を解消するボトルホルダーを、セミオーダーで製作しています。カップ型やボトル型など多様な形に対応し、持ち手も付いており、名前などの刻印もできるようです。素材も地球環境への負担が少ない、植物タンニンなめし革を使用しています。好みのデザインや機能を備えたボトルホルダーであれば、積極的に持ち歩く人も増えるかもしれません。
自社の強みを生かし、多様な角度からアクションをおこすSKLO。今後も、どのような取り組みをおこなうのか注目していきたいですね。
Text:Yuki Tsuruda