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世界には「見えないままに放置されている」ものがたくさんある。藻類の可能性を切り拓く大学生【加藤 乃絵奈・19歳】

世界には「見えないままに放置されている」ものがたくさんある。藻類の可能性を切り拓く大学生【加藤 乃絵奈・19歳】

「気になる10代名鑑」の1041人目は、加藤 乃絵奈さん(19)。藻類を活用した繊維の研究を通して、サステナブルな社会を思い描いています。幼少期科学に魅了されてから、現在は藻類の可能性を信じる加藤さんに、印象的な出来事や今後の展望まで詳しく聞いてみました。

加藤 乃絵奈を知る5つの質問

Q1.いま、いちばん力を入れている活動は?

藻類を活用した『再生光合成繊維』の開発・研究に取り組んでいます。

きっかけは、アフリカ大陸にあるビクトリア湖で藻類が大量発生したというニュースを目にしたことでした。藻類は、水質汚染や温暖化による降雨量の変化といった、つまりは人間活動の影響で発生したものなのに、『厄介者』とされています。でも、それをむしろ環境に役立つ資源へと転換できないだろうかと考えついて。

もともと幼少期から科学が好きで、中学3年生のときにはミドリムシの可能性とSDGsとの関係について調べた経験もあって。小さい頃からある、環境問題の解決に貢献する研究がしたいという想いの延長線上で、現在の研究活動に力を注いでいます

Q2.活動をしている中で、印象的だった出来事は?

「高校2年生の頃に『マリンチャレンジプログラム』という研究大会に出場したことです。

それ以前は個人で研究を進めていたのですが、大会を通じて初めて大学教授や研究者に対して、研究内容やその熱意を伝えることができて。研究への助言をもらえる機会となって、さらに研究がはかどりました。

また、同時期に全国の紡績工場を回ったんです。特に岐阜県の長谷虎紡績株式会社に招待していただいたときは、社長を含め開発部のひとたちと繊維化について議論することができました

Q3.活動するうえで、大切にしていることは?

無垢な心で世界を見ることです。

わたしは、足元で生きるような微細藻類との出会いを通じて、世界には『見えないままに放置されている可能性』が数多く存在することを実感しました。

小さく、身近にいるにもかかわらず、多くのひとがその存在に目を向けない。そんな微細藻類が実はすごい力を持っていると気づいたとき、自分の見えている世界の小ささにハッとさせられましたし、『なんで今まで見えてなかったんだろう』とちょっと震えるような気持ちになったのを覚えています。

『無垢な心』とは、ただ幼さを保つことではなく、偏見や思い込みを脱ぎ捨てて、目の前の世界を新しく受けとめる姿勢だと思っています。これは研究においても、日常においても、忘れてはいけない姿勢だと感じています」

Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?

環境にやさしい繊維として、藻類由来の新素材を産業レベルで活用し、都市空間にも取り入れていくという構想があります。

思い描いているのは、藻類の光合成の力を活かした『カーテン』や『サンシェード』など、自然と共生する都市のかたちです。さらに、藻類は光合成の際に水分を必要とするため、海に近いエリアや農業資材としての活用など、水と関わり深い場所でも利用することができればと考えています。

まだまだ構想段階のアイデアも多いですが、一つひとつを丁寧にかたちにして、持続可能でちょっと未来っぽい暮らしのあり方を提案できたらと思っています」

Q5.今後の展望は?

「バイオ繊維を社会実装し、誰もが使えるかたちで未来の暮らしをつくりたいです。

将来的には、所属する先端生命科学研究会でのバイオ高分子研究を活かし、海洋資材や濡れた環境で使用できるバイオ繊維製品の開発・販売に取り組んでいきたいと考えています。まずは、生分解性や光合成といった機能を持たせた新素材を、日常生活に取り入れやすいかたちで製品化することが当面の目標です。

その実現に向けて、事業計画をブラッシュアップしながら、財務・法務・マーケティングなどビジネス面の知識やスキルも着実に身につけていきたいと思います。

研究と起業の両軸で挑戦を続けながら、バイオ繊維を通じて持続可能な社会の実現を目指していきます」

加藤 乃絵奈のプロフィール

年齢:19歳
生年月日:2005年6月13日
出身地:神奈川県
所属:慶應義塾大学 SFC 先端科学研究会
趣味:人との何気ない対話の時間、スイーツ探訪、映画鑑賞
大切にしている言葉:“To see a world in a grain sand. And a heaven in a wild flower. Hold infinity in the palm of your hand. And eternity in an hour.”

Photo:Nanako Araie
Text:Taisei Sawamura

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