
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、ホテル椿山荘東京がおこなう環境へのユニークな取り組みについてご紹介します。
「東京雲海」で人気のホテル椿山荘東京
東京・文京区にあるホテル椿山荘東京。高級感あふれる建物の外観や部屋、見た目にも美しくおいしい料理などが人気のホテルで、都内にありながら広大な森のような庭園を持つことでも知られています。近年は、国内最大級の庭園演出である「東京雲海」が大人気。すり鉢状の地形を生かし、霧を噴霧させる様子は幻想的で、SNSでも人気の投稿になっているので、見たことがある方も多いかもしれません。
そんなホテル椿山荘東京では、敷地内でハチやホタルを育てています。お客様をおもてなしすることが最大の使命であるホテルで、なぜハチやホタルを育てているのでしょうか。取り組みを紐解いていきましょう。
東京の子どもにもホタルを見せたい!71年前にスタートしたホタル観賞会
ホテル椿山荘東京でホタルの観賞会が始まったのは1954年のこと。厚意で寄贈のあったホタルおよそ1万匹を庭園に放すと、好評だったことから、翌年以降もホタルの観賞会がおこなわれるようになりました。当時は地方から上京してくる若者も多く、ホテルの創業者が「ふるさとのホタルを思い出してほしい」と考えたこと、また「東京で生まれ育つ子どもにもホタルを見せたい」という思いから、継続されるようになったそうです。
2000年には、ホタルの専門家からの助言を得て、庭園をホタルのために改良。沢の流れや、沢周辺の植生を変え、ホタルが過ごしやすい環境に仕立てました。
現在は、庭園内の水槽と飼育施設で幼虫の育成を行い、育った幼虫を沢に放流しています。放流は近隣の小学生を招待しておこない、初夏のホタル飛翔の時期にも、地域の小学生たちが来館できるようにしているそうです。
なお、庭園の管理においても、ホタルが住みやすい環境を作るための工夫が見られます。庭園内に多く植えられているツバキやサクラは、害虫がつきやすい植物です。しかし、ホテル椿山荘東京では、殺虫剤をたくさん撒くのではなく、ホタルの幼虫に影響の少ないものを少量で使用しているといいます。また、東京雲海の霧も、飛翔のシーズンには噴出量をホタルの飛翔に影響が出ないように調整するといった工夫をおこなっています。ホタルと共存した庭園の維持がおこなわれているのです。
ハチの飼育もスタート!地域の障がい者支援にも貢献
ホタルに加えて、ホテル椿山荘東京では、2024年春、自然環境および生物多様性保全などを目的に、建物の屋上で養蜂も開始しました。養蜂家の指導のもと、5箱の養蜂箱に住むセイヨウミツバチが庭園の住人に。庭園には数多くの樹木が生え、花を咲かせること、セイヨウミツバチの行動範囲である巣から半径2kmの距離にも、緑地がたくさんあることから、養蜂をスタートしたのだといいます。
養蜂で採蜜したハチミツは「GARDEN HONEY」という商品名で、ホテルのラウンジで提供されたり、売店で販売されたりしています。ちなみに、養蜂がおこなわれているエリアの周辺で咲く花々は、季節ごとに変化していくため、ハチミツの味も変わっていくのだそう。そのため、販売されているハチミツは、購入した季節ごとに違った色合いや香りを楽しめます。
また、ハチミツの瓶詰やラベル貼付作業は、文京区の障害者支援施設「リアン文京」と「JSPちよだ」へ委託。地域の障害者の就業支援活動になっているのも、ホテル椿山荘東京でおこなわれている養蜂の特徴です。
都心のホテルで、五感を使った自然体験ができる!
ホテル椿山荘東京でおこなわれている、ホタルとミツバチを育てる取り組み。ホテルの利用者が五感を使って楽しめるだけでなく、自然環境を維持しながら、地域を巻き込む活動になっていました。人々を楽しませるユニークなアクティビティにとどまらず、環境について考えるきっかけにもなっていくのではないでしょうか。
Text:Itsuki Tanaka