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廃棄レンコンが多用途に使えるパウダーへ!レンコン農家発の新製品「HASKO」に注目【Steenz Breaking News】

廃棄レンコンが多用途に使えるパウダーへ!レンコン農家発の新製品「HASKO」に注目【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、規格外レンコンを原料にしたレンコンパウダー「HASKO」についてご紹介します。

農業生産とフードロス

まだ食べられるのに捨てられてしまう食品、「フードロス(食品ロス)」。フードロスにはいろいろありますが、今回は「規格外野菜」に注目します。

規格外野菜とは、見た目やサイズが決められた基準に合わなかったために、市場に出せなくなった野菜のことです。たとえば、形が少し曲がっている、大小のサイズアウト、色が少し変などの理由で規格外とされます。でも、野菜は自然のもの。すべてが同じ形になるわけではありません。

また、野菜類は鮮度が命。中には消費者に届く頃には傷んでしまうという理由で、生産地で廃棄されてしまうこともあります。最近は、そうした生産地で発生するフードロスの問題に取り組む企業が徐々に増えていますが、今回はその中でも茨城県で始まった「レンコン活用」の取り組みに注目。茨城県土浦市のレンコン農家が立ち上げた合同会社ハスラボの代表社員 濱田雄太さんにお話を伺いました。

合同会社ハスラボの代表社員 濱田雄太さん

田んぼでつくるレンコン。農家と廃棄の現状とは

茨城県では、霞ケ浦の豊富な水量を生かし、昭和20年ごろからレンコンが多く生産されるようになりました。レンコンは、畑ではなく「ハス田」と呼ばれる水田で栽培されています。稲を作る田んぼよりも水深が深いため、農作業は大部分の工程が機械化できません。そのため、農家の方々が胸まである長靴を履き、全ての作業を人力でおこなっています。

ちなみに、茨城県のレンコン生産量は令和5年度に29,600tでした。これは全国シェアの52.7%にあたり、日本一の生産量です。しかし、収穫があれば、その分何かしらの廃棄物もあるということ。実際、茨城県全体ではレンコン栽培にまつわる廃棄物が1,350tも出ているといいます。そのうち、可食部の廃棄量は400tにもなるそうです。

ここで、可食部であるにも関わらず廃棄されるレンコンとはどのようなものか、見てみましょう。上記写真の左が商品になるレンコン、右が廃棄されるレンコンです。どちらもおいしそうなレンコンですよね。濱田さんによれば、この写真に写っているレンコンは特に「農家にとっても何が違うかわからないレベル」だそうですが、右のレンコンは見た目などの観点から規格外となってしまうそうです。

廃棄レンコンを使ったパウダー製品化への道のり

出荷できなかったレンコンの多くは、田んぼの周りに廃棄され、土に返るだけとなっています。どう考えてももったいない。そう感じた濱田さんたちがまず取り組んだのは、廃棄レンコンを使った自家製パウダーづくりでした。「レンコンの形が問題で廃棄にされるならば、形を変えてしまおうと思いました」(濱田さん)。しかし、開発・製造過程では多くの課題が発生したのだそう。

「分析に出したところ、自家製では含有される細菌量が多く、商品化が難しい状況でした。また、パウダーを使ってもらいたいベーカリーやパティスリーに持ち込んだものの、粒度が荒いとダマになりやすく、使いづらいということもわかりました」(濱田さん)

そこで、高い製粉技術を持つ製造工場を探し、誕生したのが、特殊な低温乾燥技術を用いたレンコンパウダー「HASKO」です。

特殊な加工法により、栄養の損失が少ない「HASKO」。レンコンの持つポリフェノールや食物繊維、カリウムの多さを引き継いでいます。また、レンコンでは2週間程度の鮮度ですが、「HASKO」は賞味期限1年半となり、商品としての寿命を大幅に伸ばすことができました。

「HASKO」では、さまざまな用途を想定。すでにフィナンシェやクッキーなどの焼き菓子はもちろん、食パンやカンパーニュとして商品化されています。また、レストランではとろみを生かしたポタージュや、小麦粉の代用として揚げ衣に使うことも。こうした利用方法はグルテンフリーにもなるので、健康志向に応える料理や製品など、幅広い活用が期待できそうです。

HASKOを使った料理、実際にどんな味だった?

筆者も5月21日、東京・銀座でおこなわれたHASKOを使用したフレンチ試食会で、ポタージュや揚げ物、クッキーなどを試食しました。

ポタージュは、とろみのついた飲みやすいものでした。パウダーになっても、「とろみ」というレンコンの特性が現れるのがおもしろかったです。また、グルテンフリー素材の選択肢が広がるのは、消費者としてとてもありがたいと思いました。

ハスラボでは今後、レンコンのサプリメント化も進める構想です。

「徳島大学の特許技術を用いて、レンコンの節部から抽出したプロアントシアニジンと、お茶由来のエピガロカテキンガレートを組み合わせると、アレルギー性の鼻炎症状抑制効果があることが確認できました。エキスを使ったサプリメントの開発を目指します」(濱田さん)

レンコン産地が抱える多数の課題解決に挑戦する

レンコンの産地では、廃棄物の問題の前に、別の課題があります。それは、農家が消費者に直接販売することが難しく、価格を自らコントロールできないという点です。加えて、高齢化の進行により、廃業する農家も増加しています。こうした課題の解決に貢献することが期待されている、レンコン農家発の「HASKO」。今後の展開に熱い視線が注がれています。

Text:Itsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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