
「気になる10代名鑑」の1150人目は、YUKIEさん(19)。第2次世界大戦中のイギリス兵捕虜の家族を訪ね、キリスト教における「和解」をテーマに活動する大学生です。将来は自らの声を使いながら平和教育に携わりたいというYUKIEさんに、活動のきっかけや忘れられない出来事を聞きました。
YUKIEを知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「和解について考えるサークル活動『peace and reconciliation club』と、そして大学でおこなわれる賛美集会(Worship Night)に力を入れて取り組んでいます。peace and reconciliation clubでは、第2次世界大戦中に日本軍の捕虜となり、劣悪な環境での強制労働や拷問などの残虐行為や飢えに苦しんだイギリス兵捕虜の家族に取材をし、日英の和解のために何ができるのか考える活動をしています。
また、小さいころからピアノが好きで、コンクールに挑戦したり演奏を YouTube に投稿したりもしていて。高校時代は放送部に所属し、声で伝えることや表現することにも力を入れていました。いまでも声で表現することが好きで、声優のレッスンに通っています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「父がシンガポール人で、小さいころから戦時中のシンガポールでの日本軍の話を聞かされて育って。教科書には書いていないような、日本軍による捕虜への残虐な拷問や強制労働の話とか……。
そこから、大学で戦時中の捕虜のことを研究している先輩に出会い、大学1年生の夏に、イギリスに10日間滞在して、元捕虜やその家族にインタビューをおこないました。
『PTSDが原因でなかなか当時のことを赦せない人が、どうしたらその傷を乗り越えることができるのか』というテーマを、キリスト教の視点から、和解を考察するというのが目的で。キリスト教は、神がわたしたちを赦してくれているように、わたしたちも他者を赦すという考えがあるんです。
泣きながら話す家族の姿を見て、ある程度知っていたけれど『彼らにとっては昔の話じゃないんだ』と強く感じましたね。日本人を目にして、当時のトラウマから震える父親を見た子どもたちにも、憎しみが受け継がれてしまうこともある。だからこそ、この憎しみの連鎖を断ち切るために、キリスト教の視点からの和解が必要なんだと思っています」
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Q3. 活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「今年、沖縄戦について学ぶ和解のフォーラムに参加しました。参加者と話すなかで、沖縄戦というテーマを超えて、共感とはまずは自分の傷と向き合うことでできると気づいたんです。
フォーラムでは、2019年の香港での学生運動のときに逮捕された学生を支援しているという香港の牧師や、北朝鮮と韓国の間の赦しを研究している人とお話しました。そのときに、それぞれ違う傷を持っていようとも、完璧に理解することができずとも、お互いに支えあうことはできると感じたんです。
国どうしの関係が悪いと、わたしたちは何となくその国の人との交流も避けがちです。でも、人と人のつながりは変わらなくて、それぞれが何かしらの痛みを抱えている存在で。結局同じ人間だということに気づかされた5日間でした」

Q4. 活動するうえで、大切にしていることは?
「まず自分を整えることを大事にしています。
いままで『明日死ぬかもしれない』という気持ちで活動していたせいか、何だかリラックスできず疲れてしまう日が続いていた時期があって。でも、『もっと一瞬一瞬を楽しんで、生きてるって実感したい』と思って、いまは自分が持つべき責任の境界線を引きながら、距離を保つようにしています。
あとは、高校1年生のときから日記を書く習慣を続けています。5人兄弟の長女だったこともあり、ずっと誰かとしゃべり続ける毎日でしたが、高校進学の入寮を機に、誰とも話せない寂しさが生まれて。いまの自分の感情を残したいという気持ちもあって、始めました。
いまは毎晩30分ほど、カモミールティーを飲みながら日記を書いて、自分を振り返りながら整えています。以前銭湯で出会ったおばあさんが教えてくれて、帰りに早速カモミールティーを買って飲んでみたらすごくよかったので、いまも飲み続けています」
Q5. 将来の展望は?
「来年は、大学の交換留学で中国・南京に留学する予定です。
南京のことやアジアの歴史を学びたいと考えているので、歴史や他者の傷を学ぶ機会を得るからこそ、自分を見つめるプロセスを大切にしていきたいです。いまは、まだ自分を整える方法を探している段階ですが、もう少し道が見えてきたら、他の活動の進め方や距離の取り方も見えてくるんだろうと思っています。
将来は、何か声を使う仕事をしたくて。平和学習にも興味あるので、資料館の音声ガイドのナレーションを担当するのが、なんとなくの夢です。あとは、英語の解説しかついていない記念碑が多いのも気になっていて。日本の修学旅行生などのためにも、日本語の解説を音声ガイドなどでつけたいです。
声は技術的なレッスンでも磨くことができますが、いろんな視点を知ったときに声にも重みが出ると思っていて。いろんな人に会って、いろんな本を読んで、インプットの年にしていきたいですね」

YUKIEのプロフィール
年齢:19歳
出身地:シンガポール生まれ沖縄育ち
所属:国際基督教大学、Worship Night、KGK(キリスト者学生会)、 peace and reconciliation club(日英和解プロジェクト)
趣味:パン屋巡り、ジクソーパズル
特技:ピアノ、早口言葉
大切にしている言葉:全てに時がある
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Photo:Nanako Araie
Text:Haru Ninagawa






