
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカの汚職問題について紹介します。
13万人以上の公務員が賄賂で就職
日本でもたびたび問題となっている「政治とカネ」。先月、ウガンダで賄賂にまつわる衝撃的な報告書が公表されました。それは、政府監査監査官(IGG)とマケレレ大学の経済政策研究センターが2018年から2022年にかけて実施した調査で、ウガンダの公務員の1/3にあたる35%以上の人が賄賂で仕事に就いていたという内容です。具体的には、国内にいる48万人の公務員のうち、約133,000人が仕事を得るために賄賂を支払ったことを認めた、というのです。
要求された賄賂は役職やセクターによって異なり、小学校教師や看護助手などは約12万円で、部門長といった上級職では最大約210万円にも及んだとのこと。また、地区レベルの政府職の85%が賄賂によって仕事を得ており、地方自治体の求職者が2018年から2022年の間に支払った賄賂は約1億2万円以上を超えていたのだそうです。
報告書によると、仕事のために賄賂を送った人の中には必要な資格を持っていない人も含まれるそうです。つまり、保健師や教師、エンジニアまでもが資格を持たずに業務にあたっていた可能性があるということです。さらに、賄賂だけでなく、証明書や学術文書、議事録、求人の広告の偽装、そしてなりすましといった不正行為も明らかとなりました。これらは、ウガンダで崩壊している建物や道路をよく見かけたりする理由のひとつだと述べられています。
検査官はすでに450人以上の公務員を汚職で解雇しましたが、賄賂を要求した側も、支払った側も、雇用の存続のために隠蔽している可能性もあるそうです。
ここまで汚職が蔓延する一方で、資格もスキルもあるウガンダ人の人材は海外で雇用機会を求めているため、ウガンダ国内での熟練した人材の不足につながっているという指摘もあります。
世界で最も腐敗した大陸
ウガンダに限らず、サハラ以南アフリカでは他にも、公務員の汚職が問題になっている国があります。アフリカでここまで賄賂や汚職が蔓延しているのはなぜでしょうか。
その理由のひとつだと考えられているのが、19世紀後半から20世紀前半にかけて、欧州列強がアフリカ大陸を分割支配した「植民地主義」です。一説によると、植民地主義はサハラ以南アフリカの官僚機構を不安定にさせ、体系的に腐敗させたのではないか、と言われています。植民地以前のアフリカでは、それぞれの民族が秩序を保つための独自の制度を持っていました。
例えば、ナイジェリアのヨルバ族は、「オメ・ヨシ」という制度が王族の権力の乱用を防いでいました。また、ルワンダでは土地所有権をめぐって「ウブゴンデ」という制度が利用されていたそうです。
しかし、植民地時代、アフリカは民族的に分画化されてしまいます。公務員や政治家は、特定の民族グループを優遇するといったことに自らの立場を利用するようになりました。さらに、圧倒的な権力をもつ植民地支配者が現れたことで、もともとアフリカ地域で権力者をもっていた人々は「これまでのように市民の信頼を得るのではなく、植民地支配者から権力を保持することを認められないといけない」ようになりました。その過程で賄賂が有力な手段のひとつとして一般的になってしまった、という考えもあります。
また、本来市民を守るべきである警察と軍隊は、植民地時代に人々の隔離や反植民地蜂起の鎮圧など、植民地化を進める上で設立されました。しかし、市民の抑圧が内面化した警察や軍隊は、いまでも罪のない市民を恐怖にさらしている上、犯罪者が司法を逃れるために賄賂を贈るといった行為は頻繁におこなわれています。
世界で最も腐敗しているとも言われるアフリカ。国際援助や開発も、ときに一部の人々の利益や不正につながってしまう恐れがあります。汚職問題に迅速な解決策はありませんが、アフリカ各国は長期的に汚職を追跡するための独立した委員会の設置や、監視システムを導入していく必要がありそうです。
References:
INSPECTORATE OF GOVERNMENT「Over One-Third Of Public Servants Secured Jobs Through Bribes, IG Study Shows」
MONITOR「Over 130,000 civil servants bribed to get jobs, says IGG」
MONITOR「85% of Uganda’s civil servants hired through bribery, says IGG Kamya」
UNIVERSITY OF SUSSEX「Commend and Condemn: A Strategy for Combating Corruption in Africa」
Text:Hao Kanayama