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女性を標的とした殺人「フェミサイド」被害が世界最多。アフリカでのジェンダーに基づく暴力の実情【Steenz Breaking News】

女性を標的とした殺人「フェミサイド」被害が世界最多。アフリカでのジェンダーに基づく暴力の実情【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカで起きているジェンダーに基づく暴力の実態について紹介します。

フェミサイドの被害者が世界で最も多いのはアフリカ

国連世界保健機関(WHO)は2024年に、世界中の交際経験のある10代の女性のうち、約4分の1(24%)にあたる1900万人近くが、20歳になるまでにパートナーから身体的または性的な暴力を受けることになるだろう、という推計を発表しました。アフリカは特に「ジェンダーに基づく暴力(GBV)」が深刻だと言われています。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ジェンダーに基づく暴力には、性暴力、身体的暴力、心理的暴力、身体的に有害とされる伝統的慣習、社会的・経済的暴力があるとされています。その中でも、女性であることを理由にした殺害を意味するフェミサイドが、アフリカで深刻な問題となっています。

国連が発表した報告書によると、2023年には世界中で85,000人の女性と少女が意図的に殺害されました。最も多かったのはアフリカで、人数は21,700人にものぼります。さらに、ヨーロッパやアメリカ大陸では、親密なパートナーによる被害が多かったのに対し、アフリカでは家族による殺害が多く報告されています。

 

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南アフリカでは、3時間にひとり、女性が殺害されているといいます。南アフリカのGBVF(ジェンダーに基づく暴力とフェミサイド)の割合の高さには、アパルトヘイトがつくり出した社会構造が影響しているのではないか、という指摘もあります。

また、ケニアでは、2023年9月から2024年12月の間に7,100件以上のジェンダーに基づく暴力が報告され、人権団体は「フェミサイドは国家的な危機」と述べています。

「暴力の発生数=事件数」ではない

アフリカでフェミサイドを含むジェンダーに基づく暴力が多い理由として、ひとつめは、被害者が暴力を警察や周りの人に報告しにくい環境であることがあげられます。

 

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アフリカに限らず、女性が暴力に遭っても、恐怖や報復を恐れて警察に相談できないことは少なくありません。特に性暴力の場合は、そうした話をタブー視する風潮や、被害に遭ったことを人に知られたくない、などの理由からなかなか相談できないものです。いざ相談しても「なぜそんな服装をしていたのか」「なぜそんなに遅くまで外出を?」と、加害者ではなく被害者に責任を転嫁されることもあるかもしれません。

アフリカではさらに、警察の汚職が蔓延しており、加害者は賄賂で起訴を逃れるケースも多く「警察に相談しても無駄」という意識が根付いてしまっています。

そのため、暴力が警察に報告されず、加害者が法で裁かれないケースが多いのです。

ふたつめは、男性優位や家父長制の意識の浸透です。もちろん家庭によりますが、アフリカの多くの地域では「男性が大黒柱になるべき」といった考えが根強く残っています。女性が男性に金銭的に依存しているという状況が、女性が暴力を受けても家庭から抜け出せない原因ともなっているのです。

アフリカで多発する、ジェンダーに基づく暴力。その多くは人目につかない場所で起こり、いまも多くの女性が暴力やフェミサイドの犠牲となっています。

こうした暴力は個人間の問題ではなく、社会に根強く残る不平等や、女性が声を上げにくい社会構造が背景にあると考えられています。しかし現地の報道では「男性が女性をレイプした」という表現ではなく、「女性がレイプされた」という、被害者側に焦点を当てた表現を耳にすることがあり、性暴力を生み出す社会や、加害者の責任を無視した表現の仕方に危機感を覚えます。

社会の構造的不平等の改善をはじめ、被害者の避難先や、心理的支援・医療的支援の整備が求められています。

References:
『Intimate partner violence against adolescent girls: regional and national prevalence estimates and associated countrylevel factors』LynnMarie Sardinha, Ilknur Yüksel-Kaptanoğlu, Mathieu Maheu-Giroux, Claudia García-Moreno
United Nations「One woman is killed every 10 minutes by their intimate partners or other family members 」
United Nations「One woman killed every 10 minutes: The harrowing global reality of femicide」
AL JAZEERA「African manhood is broken – and it’s costing women their lives」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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