Teen's Snapshots

儚いからこそ面白い。自分のからだを起点に、演劇で新たな挑戦に挑む舞台人【笹川幹太・19歳】

儚いからこそ面白い。自分のからだを起点に、演劇で新たな挑戦に挑む舞台人【笹川幹太・19歳】

「気になる10代名鑑」の1071人目は、笹川幹太かんたさん(19)。子役時代からミュージカルや歌舞伎の舞台に立ち、いまも舞台芸術の価値を日々問い続けています。「浅く広く、そして究めていくのが自分の持ち味なんです」と話す笹川さんに、活動のきっかけや今後の展望を詳しく聞いてみました。

笹川幹太の活動を知る5つの質問

Q1. プロフィールを教えてください。

俳優やダンサーとして、舞台公演に参加したり、ダンスユニットを組んで活動したりしています。

小学生の頃からはミュージカルや歌舞伎の子役をしていたんですが、高校ではもっと仕事を極めたいと、芸術高校に進んで。演者からダンス、裏方までを一通り経験しました。

大学でも舞台に立って演じながら、さまざまなジャンルにわたる理論や歴史を幅広く学びたいと思い、表象メディア論を専攻しています。通っている大学は伝統的に演劇が強い大学でもあるので、コミュニティも活発で。身体表現について議論できる環境が刺激的なんです」

Q2. 活動を始めたきっかけはなんですか?

「ぼくが初めて舞台に立ったのは、小学1年生のときです。幼稚園の頃に観たミュージカルがきっかけで、横浜市の市民ミュージカルに参加しました。

そこは4歳から80代まで、本当にいろいろな人がいて。子どものころから、物事を客観的に見る癖があるのですが、みんなが舞台にものすごい熱量を注いでいるのを目の当たりにして、なんでだろう……って純粋に思ったんです。

演劇にどうしてこんなにも夢中になれるのか、そして惹かれるのか。それを一生かけて解き明かしたい、と常に思っています」

Q3. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。

『尖ったもの』がないんじゃないかと悩んだことがあります。

いままで、いろんなジャンルをやってきたけれど、専門といえる演目が見つかっていない……。『自分は結局、何者なんだろう?』とわからなくなってしまう時期があったんです。

でも、手探りで進んでいく中で、自分だけのアイデンティティが少しずつわかるようになってきて。

唯一無二の自分の身体をよりどころとして、広く浅く、あえて自由にジャンルを超えていくこと。そこから深く究めていくこと。最近はこれを強みに思って、パフォーマーを名乗ることができています。

『自分ってこんなこともできるんだ!』と常に新鮮に自分自身に驚けるように、チャレンジしつづけたいです」

Q4. 最近始めたことはなんですか?

劇場での上演とは異なる表現のありかたにも興味があります。

9月中に、『怪しさ』や『都市伝説』にフォーカスしたpodcast番組、『たくらみネットワーク』を始めます。ポッドキャストを聴くのが趣味で好きなので、そこから始めてみようと。リリースして終わり、ではなく、継続的に育てていく企画の立ち上げに取り組んでみようと思っています。

少し前にはなりますが、舞台で生まれる境界線についても考えていました。

たとえば、歌舞伎やオペラには、観客と舞台を隔てる透明な壁があるように感じます。観客は固定された席から、世界を見つめるイメージです。一方、子どもの頃に出演した市民ミュージカルではその関係がまた違っていて、一様なものではないのだと気づいたんです。観客も一員として参加して完成する、イマーシブ演劇も興味の対象です」

Q5. 今後の展望は?

創作者としてのパフォーマーであり続けたいと思っています。演じることだけでなく、将来的には自分で作品をプロデュースしたり、脚本を書いてみたりしたいです。

コロナ禍で高校生だったころ、オンラインで演劇の授業を受けたり、自室でひとりで踊ったりする経験をしました。それは、舞台芸術の“価値”を改めて考えるきっかけになりました。上演が終わればメンバーは解散して、舞台となっていた場所も消える。一見、“無駄”なものなのかもしれません。

でも、その場に“居る”ことでしか成り立たない演劇は、とても儚く、寂しく、そして面白い。『無駄なものがいつのまにか役に立っている』ことを信じています。自分のためにも、誰かのためにも、そんな演劇を作り続けていきたいです」

笹川幹太のプロフィール

年齢:19歳
出身:神奈川県横浜市
所属:早稲田大学文化構想学部
趣味:自販機に売っているよくわからない飲み物を買う、変な看板の写真を撮る、読書、Podcastを聴く
特技:言葉と身体に境界をつくらない
大切にしている言葉:神の手の中にあるのならその時々にできることは宇宙の中で良いことを決意するくらい

笹川幹太のSNS

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Photo:Nanako Araie
Text:Chihiro Bandome

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Chihiro Bandome

ライター

2003年生まれ、埼玉県出身。上智大学文学部新聞学科在学。自分の目で現場を見て、自分の言葉で人と話して、世界を知っていきたい。大学では、主にニュース記事の執筆を学んでいる。2023年より、ライターとして「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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