
「気になる10代名鑑」の1063人目は、齋かれんさん(18)。中高生向けフェムケアブランドを立ち上げ、いまはタンポンの開発に挑戦しています。自身の生理痛の経験と社会の認識の差からブランド立ち上げにいたったという齋さんに、活動で悩んでいるという世間の「フェミニズム」の捉え方や描いている理想の社会像について聞いてみました。
齋かれんを知る5つの質問
Q1.いま、力を入れていることは?
「中高生向けのフェムケアブランド『PopPep』の立ち上げを目指して、いまは生理用品の研究・開発に取り組んでいます。
英語で花という意味のpoppyと、元気という意味のスラングであるpeppyを組み合わせてつけたのが、『PopPep』。 かわいらしく、元気に生理の期間を過ごせるようにという願いをこめています。
いま製作中のプロダクトは、初めて使う若い年代に向けたタンポンです。吸収力や肌荒れ予防のために、少しずつ繊維の配合を変えながら、産婦人科や校医の先生、生理用品の大手企業の力を借りて試作を進めています。
また、近いうちにフェミニズムについての中学生向けワークショップをおこなう予定です。プロダクトをつくるだけでは、生理に対する社会の認識は変えられないから、こうしたイベントも通して、包括的に生理に悩める中高生のサポートをしていきたいです」
Q2.活動を始めたきっかけは?
「自分自身、生理痛で学校に行けないと先生から『きちんと体調管理をしましょう』などという言葉で当たり前に片付けられてしまうことへの辛さを感じていて……。
生理に対する認識の違いは男女の間だけと思われがちかもしれないけれど、実は女性たちの間でも理解度に差があって。もともと生理痛が軽い人も重い人もいるからこそ、なかなかひとつの認識に至らないんです。
さらにSNSでは、生理やフェミニズムについて極端な意見ばかり目立つことが多いと感じていて。思春期の悩みを持つ中高生はデジタルネイティブでもあるので、本当に困ったときに正確な情報が届かないようではまずいなと。だから自分が『助け舟になる選択肢を提供してあげたい』と思ったんです」
Q3.活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「自分は、フェムテック、フェミニズムという言葉が、本来とは違う印象の言葉として捉えられてしまうことに悩むことがあります。
SNSでのやり取りなどを背景に、フェミニズムが『女性のためだけの活動』と誤解されることが多いと思うんです。でも、本来のフェミニズムが目指すものってきっとそうではなくて。誰もが自分らしく生きる社会を作ろう、そのための環境を整えていこう、とポジティブな考えのはずなんです。
だから、現実に寄り添った、誰もが信頼できる正しい情報が広まってほしいです。その先に、男女の違いで攻撃的になったり排他的になったりしない、優しい未来があるんじゃないかなって」
Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?
「すべての女性が自分の手で選択肢を選び、自分を肯定できる社会をつくりたいです。
そのために、PopPepを日本一の包括的フェムケアにしたいです。生理用品は直接からだに触れるものなので、法律の問題など商品開発で難しいと感じる時もあるのですが、大学在学中に製品を商品化して、いち早く悩みに寄り添いたいんです。
情報を正しく得られるのが学校であるべきなのに、実際の教育現場では、まだまだ生理を「触れてはいけない話題」としている空気がありますよね。フェムテックが特別視されず、誰にとっても自然な存在であるような、そんな寛容な社会にしたいです」
Q5.将来の展望は?
「まだまだ女性起業家は少ないからこそ、『こんなふうに女性でも関係なく挑戦することもできるんだ』と、次の世代の背中を押したいですね。
でも、起業家としてバリバリ働くのもいいけれど、家庭を持つのもいいなと感じています。
自分が自分らしくいられる瞬間って、いわゆる女の子っぽいことをしているときなんです。女の子らしくいることに良し悪しがあるのではなくて、いろんな選択肢の中に女性らしい行動はあってもいいと思うんです。そんなふうに、女性であることを後ろめたく思わないことが、自分を愛する一歩な気がします」
齋かれんのプロフィール
年齢:18歳
出身地:東京都文京区
所属:都立小石川中等教育学校
趣味:料理、おしゃれ、ChatGPT
特技:絶対音感
大切にしている言葉:「やりたいことはやる」
Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami