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水に浮かぶ電気自動車「FOMM ONE」がタイで大活躍!開発したのは日本の会社です【Steenz Breaking News】

水に浮かぶ電気自動車「FOMM ONE」がタイで大活躍!開発したのは日本の会社です【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今回は、現在タイでニーズが高まっている、日系ベンチャーが生産・販売している電気自動車(EV)の「FOMM ONE」についてご紹介します。

タイで人気を集めるEV。開発したのは日系ベンチャー企業

 

 

世界的にEV普及の機運が高まる中、日系ベンチャーが開発した、斬新なコンセプトのEVが、タイで人気を集めているんです。

それはFOMMフォムの小型EV「FOMM ONE」。実はこの会社、日本の企業で、開発のきっかけは、津波で多くの犠牲者が出た、2011年に発生した東日本大震災。「水に浮かぶ車があれば、助かる命があったかもしれない」という思いが、水害が多発するタイでニーズをつかんでいるのです。

きっかけは東日本大震災

FOMM ONEは、「世界最小クラスで4人乗り、緊急時には水に浮く電気自動車」というキャッチコピーで、2019年にタイで生産が開始されました。この車を開発したFOMMフォムは、スズキの元エンジニアであり、トヨタ車体の小型BEV「コムス」の開発にも携わった鶴巻日出夫さんが2013年に設立したベンチャー企業です。

鶴巻さんは、東日本大震災をきっかけに、「水に浮く車を開発したい」と決意。自動車市場の成長が見込まれる東南アジア諸国連合(ASEAN)で、EVの浸透を図る目的もあり、自動車産業が集積しているタイで生産を開始したそうです。

これまで累計で約440台が販売されており、タイ国内のEV市場(21年)の7%を占めているといいます。販売価格は66万4000バーツ(約256万円)と、タイで販売されているEVの中では低価格です。

大雨が続くタイ独自のニーズ

この「FOMM ONE」ですが、現在、タイでのニーズが高まっています。背景にあるのは、世界的な異常気象の影響で、雨期(5~10月)の降水量が例年より増加し、道路の冠水が増えたこと。今年の雨期の期間中、SNSでは、「道路が川になっている」「こんな大雨は、過去数年見たことがない」といった投稿が相次ぎました。

FOMMの担当者は、「水害対策に加えて、(ロシアによるウクライナ侵攻に伴う)ガソリン代高騰の影響もあり、新車、中古車ともに引き合いが増えている」と話します。

ボートのように水に浮く設計

ではこの「FOMM ONE」は、どういった仕様で水に浮くことができるのでしょうか。車両はインホイールモーター(ホイール内で駆動するモーター)駆動となっており、タイヤ、モーター、ブレーキ、インバーター部分は、完全防水設計です。ドアを閉めることで水は完全にシャットアウトされ、ボートのように車全体が浮かびます。

タイでは2019年の販売開始して以来、北部の水害地域に「FOMM ONE」を派遣して、救援物資を届けるなどしており、すでに災害救助の現場で活用されているそうです。

また、タイにおけるEV普及の機運の高まりも、「FOMM ONE」の人気を後押ししそうです。タイ政府は、国内自動車生産に占めるEVの割合を、30年までに3割に引き上げる方針を掲げています。EV用充電スタンドも、今年8月時点の944か所から、2030年までには1394か所に拡大する計画です。

日本に逆輸入も!世界に広がるFOMM

「FOMM ONE」は、日本でも昨年から輸入が開始され、今年9月半ばまでに約30台が販売されました。また、今後は製造コストを減らすため、中国での生産に移行する準備も進めているそうです。将来的には、中国と東南アジアのほか、中南米への進出も目指しており、さらに自動運転の分野にもチャレンジする計画があります。

世界的な温暖化が進み、異常気象が懸念される中で、「FOMM ONE」のニーズは世界各地で高まり、人々の暮らしを手助けするかもしれません。

Image:FOMM(提供)
Text:Risako Hata

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Risako Hata

ライター

タイ在住のジャーナリスト。共同通信系メディアにて5年のタイ駐在を経て独立。現在は、アジアの経済や人道問題、SDGsに関連する記事を執筆。

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