
「気になる10代名鑑」16人目は、日本大学芸術学部に在学しながら、VJやビデオディレクターとして活動するippaida storageさん(19)。テクノロジーを駆使した先鋭的なクリエーションが、クラブシーンを中心に注目を集めています。そんな彼の創作の原点から裏側にまで迫ります。
■ippaida storageを知る10の質問

Q1. プロフィールを教えてください
「宮崎県出身、19歳。日本大学芸術学部映画学科に在学中で、VJやビデオディレクターとして活動しています。もともと理系で、高校3年の冬まで国立大学に入るために勉強してました。センター試験も受けたんですけど、そこから「やっぱ芸術系の大学に行きたい!」と思って。周りの人の反対を押し切って行動して、今に至ります。
『ippaida storage』という名義は、地元の先輩とアーティスト名を考えていたときに、ちょうどパソコンに『ストレージがいっぱいです』と表示されて。それをそのまま名前にしちゃいました」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「音楽が好きだったので、もともとは音楽を作りたいって思ってました。でも、映画学科だし、デジタルアートにも興味があったので、『映像で何かできないかな』と思って。そのタイミングで、VJやビデオディレクターをやっているJACKSON kakiさんの作品を見て、相当喰らって…。『自分でもこういう作品をつくりたい!』と思いました。
そのとき、たまたまアシスタントを募集していたので、即メッセージを送って、次の日に会いに行きました。当時、映像の技術や実績はゼロだったんですけど、アシスタントとして呼んでもらって。今でもお世話になっています」
Q3. どんなことを大切にして活動していますか?
「とりあえず手を動かしてから、いろいろ考えるようにしています。理論的な裏付けを考えてから創作することもなくはないのですが、基本的には手を動かし始めないと、アイデアは浮かびづらくて。どちらかと言ったら、『考えるより先に行動派』かもしれないです」
Q4. 創作活動をしていて落ち込むことは?
「しょっちゅうあります。そういうときは一旦手を止めて、好きなことをしたり、友達に相談したりします。友達の中にも、写真や音楽、服飾や彫刻などをやっているアーティストが多いので、話をするだけで刺激がもらえるんですよ。あとは同じ学校の友達とも、他愛もない話をして気持ちを切り替えています」

Q5. 創作活動をやっていてよかったと感じる瞬間は?
「今までできなかった表現ができたり、自分自身でもヤバイと思える作品ができたりしたときは、興奮します。それこそ昨日、つくった作品は、我ながらヤバくて震えました(笑)。SNSにアップしたら、昔から好きだったアーティストさんから連絡がきて。この作品を生み出したことが今後の活動の転機になるかもしれないですね」
Q6. 趣味はありますか?
「ゲームのバグを見ること。ゲームはプレイすることより、ゲームの世界を見るのが好きです。バグって画面にノイズがかかってる感じとか、おもしろいんですよ。自分のVJのスタイルも『ノイジー』を意識しているし、VRの作品として『ノイズの滝』っていうのを作ってみたり。バグから作品のインスピレーションを受けることはよくあります」

Q7. 宝物はなんですか?
「いろんな刺激をくれる友達、あとは家族です。いきなりスピリチュアル的な話になるんですけど、地元の宮崎に帰ると、家族に『あんたはまだ目覚めてない』みたいなことを言われるんですよ(笑)。でも創作活動をしていく上で、その言葉はけっこう響いていて、早く目覚めたいっていう気持ちで、日々修行中です」
Q8. 最近新しく始めた挑戦は?
「3DCGを始めました。見た目はよりリアルに近いけど、内容は全然リアルじゃない、そんなバーチャルな感覚がめっちゃ面白くて。今まで、イベントのオーガナイズや映像制作のアシスタントなど、いろんなことをやってきたけど、それらとは違って、ひとりで完結するところが新鮮。3DCGを始めてから、やっといい感じの作品がつくれるようになりました」
Q9. 今後の展望・将来の夢は?
「アーティストとしても活動しながら、自分が大事にしているクラブシーンの活性化に少しでも携われたらいいなと思います。『活性化』っていっても、アンダーグラウンドにはアンダーグラウンドの良さがあると思うので、『より多くの人に知ってもらいたい』とか『市場を大きくする』という意味ではなく、シーンの中でより最先端なことをしたり、そういう活動をしている人を支援したりしていきたいです」

Q10.同じ時代を生きる10代に、メッセージをお願いします
「自分はすごく厳しい高校に通っていたんですけど、当時は学校に対する不満とかやりたいこと、なかなか口に出せませんでした。でも『このままじゃ人生終わる』って思って、最後の抵抗として、芸大に行くことを決めたんです。
10代は人目を気にして言いたいことが言えなかったりする時期だけど、思ってることは口に出すべきだと思います。みんなで不満に抗っていきましょう!」
■ippaida storageの今日のファッション

「スキンズカルチャーを意識していて、トップスはそれにゆかりのあるブランド、『FRED PERRY』のもの。服を選ぶときは、見た目も大事だけど、カルチャーやその服が持つ背景をみて選ぶことが多いです」

■ippaida storageのSNS
Photo:Eri Miura
Text:Yui Kato
Edit:Takeshi Koh