
「気になる10代名鑑」1380人目は、かなえさん(19)。神奈川県川崎市で地域の小学生バレーボールチームのボランティアコーチとして活動しています。 かつて東京都でベスト8に入る強豪校でプレーしていたものの、一度はコートを離れる決断をしたかなえさんが、なぜふたたびバレーと向き合うことになったのか、その思いと将来のヴィジョンを聞きました。
かなえを知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「地域の小学生バレーボールチームで、ボランティアコーチをしています。 監督やコーチが技術的な指導をする中で、わたしは子どもたちの『伴走者』でありたいと考えて活動しています。
コーチという肩書きではありますが、子どもたちには『かなえ』と呼んでもらっています。指導者という高い目線ではなく、同じ目線でいっしょにプレーを楽しみ、練習中も一人ひとりの顔色や体調の変化に真っ先に気づける存在でありたいんです。バレーの技術を教えるだけでなく、仲間を思いやる気持ちや、周囲への感謝を伝えられるような、人としての成長を支える指導を心がけています。
また中高生の探究活動や出張授業をサポートする『ディスカバ!』という団体で、メンターとしても活動しています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「バレーを自分らしくプレー出来なくなってしまったことから、一度プレイヤーを辞める決断をしたことがきっかけです。
高校時代、わたしは東京都でベスト8に入る強豪校に身を置いていました。しかし、チーム内の人間関係が複雑で、わたしは常に周囲の相談役を担うばかり。気づけば、自分自身が心から笑えなくなっていました。そんなわたしの異変に気づいたのは、家族でした。
ある日、いつもは練習試合をビデオに撮って応援してくれていた父が、『もういいよ、辞めても』と一言をかけてくれたんです。そのとき、初めて親の前で泣きました。家族は勝つこと以上に、わたしの笑顔を願ってくれていたんです。
話し合いの結果、自分らしさを取り戻すため、一度コートを離れることを決めました。その後、喪失感を感じていたときに、小学生時代の監督から『いっしょに子どもたちを教えないか』と誘われたことが、コーチとしての新しい一歩になりました」

Q3. 活動をする中で、印象的だった出来事は?
「怒られるのを恐れて、本来の力を発揮できなくなっていた子との出会いです。 その子は監督に下手くそだと言われて、ひどく落ち込んでいましたが、後日、保護者から『家では何度もそのプレーを練習している』と聞きました。
プレーの裏側にある努力や悩みに、もっと寄り添わなければいけないと強く感じた瞬間でした。それ以来、子どもだけでなく保護者のみなさんとの対話も大切にするようになりました。家庭での様子を知ることで、その子に本当に必要な言葉をかけられるようになります。『下手じゃないよ、頑張っているのをわかっているよ』と伝え、挑戦しやすい雰囲気をつくることを大切にしています」
Q4. 活動をするうえで、大切にしていることは?
「『ディスカバ!』でのメンター活動で得た経験を活かし、多角的な視点でチームを支えることです。
現在もメンターとして参加している『ディスカバ!』で、自分のやりたいことに挑戦する多くの仲間や中高生に出会い、対話を重ねる中で、コミュニケーションの幅を広げる大切さを学びました。
この経験が、バレーの指導にも大きな影響を与えています。以前は子どもたちのことばかり考えていましたが、いまは監督や保護者も、それぞれに悩みや熱い思いを抱えているひとりの人間なのだと気づけるようになりました。監督が仕事帰りにボランティアで教えてくれている背景や、保護者の不安に耳を傾け、それぞれの考えに寄り添うことで、チーム全体をやわらかくつなぐ調整役になれるよう意識しています」

Q5. 将来の展望は?
「将来の夢は、トップアスリートを支えるトレーナーになることです。
プロ野球選手を目指している弟が努力する姿を間近で見てきたことが、選手を支える仕事に惹かれたきっかけでした。いまは大学でスポーツ科学を専攻し、身体の仕組みやケガの予防など、選手が最高のパフォーマンスを発揮するための専門知識を学んでいます。
将来はプロの現場で経験を積み、そこで得た知識を地域の子どもたちや、年齢、障がいの有無に関係なくスポーツを楽しみたいすべての人に還元していきたいです。社会人になっても、仕事の傍らで、いまのチームの子どもたちの笑顔を守り続けながら、誰もがスポーツを通して幸せになれる環境をつくることが、わたしのビジョンです」

かなえのプロフィール
年齢:19歳
出身地:神奈川県川崎市
所属:桜美林大学 健康福祉学群(スポーツ科学専攻)、ディスカバ!
趣味・特技:スポーツをすることや観戦、音楽を聴くこと、読書、料理、映画やドラマ鑑賞/人の話を聞くこと
Photo:Nanako Araie
Text:Selna Iwasa






