
「気になる10代名鑑」1296人目は、とおるさん(19)。幼い頃から尺八を続け、準師範の資格を持つ傍ら、日本の伝統文化を取り巻く環境や継承の課題に関心を深めてきました。文化もまた、インフラと同じ社会の基盤であると話すとおるさんに、そのきっかけとなったフランス留学の話や、これから目指したい姿について聞きました。
とおるを知る5つの質問

Q1. プロフィールを教えてください
「9歳の頃に尺八をはじめて、準師範資格を持っています。練習を重ねる中で、尺八が生み出す空間の広がりや、音に宿る侘び寂びの美しさに強く魅了されてきました。
また、高校時代にフランスへ1年間留学したとき、社会全体で伝統文化を支えていることに感銘を受けました。一方、日本は伝統文化の継承が一部の人たちに託されていて、その違いに衝撃を受けて。
こうした経験から、文化を守っていくための社会制度をつくりたいと、大学では文化政策について学んでいます」
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Q2. 尺八を始めたきっかけは?
「父が尺八を始めたとき、いっしょに教室に着いていったことがきっかけです。最初は正直まったく興味がなく、つまらないとさえ感じていました。
転機は師匠に勧められて準師範試験を受験したことです。実は、その当時までは続けるつもりはあまりなくて、なんとなくで受けた試験でした。でも、受験にはこれまで学んできた演奏技術に加え、尺八の歴史や音楽理論といった楽理も学ぶ必要があって。
文化的背景や成り立ちを知る中で、いままでは考えたことのなかった尺八の奥深い魅力に惹かれるようになりましたね」
Q3. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「『伝統音楽をどう現代に伝えていくか』という点には、常に難しさを感じています。
伝統音楽の世界は高齢化も進んでおり、継承者不足が深刻です。実際、尺八教室もおじいさんやおばあさんが中心で、このままだと継ぐ人がいなくなると感じていて。日本の伝統音楽なのに、あまり注目されない状況が続いていることに強い問題意識を持つようになりました。
師匠もSNSなど新しい発信に挑戦しています。しかし、若者に関心を持ってもらうために流行曲を尺八で演奏すればいいとも思っていません。無理に現代的にすると、本来の尺八の魅力や世界観が薄れてしまうと感じるんですよね。
伝統音楽そのものが持つ背景や価値、面白さをどう現代の人に伝えていくかを、まだまだ考え続けているところです」

Q4. これまでで特に、印象的だった出来事は?
「高校時代に1年間フランスに留学し、『文化を社会がどう支えるか』という視点を持つようになったことです。
フランスでは、歴史あるオルガンの文化を守るために、海外からきた留学生に対しても、税金から補助金や住宅支援をおこない、音楽に集中できる環境が整えられていました。また、その学生たちが地域の教会で演奏することで、その文化が社会の中で循環していました。
日本では、道路やインフラのような目に見える公共事業には、理解が得られやすいです。一方で、伝統音楽や伝統工芸に税金を使うことには、疑問を持たれやすいと感じています。しかし、文化もまた社会をかたちづくる大切な基盤のひとつだと思っています。
フランスでの経験は、文化とは『好きな人だけが楽しむもの』ではなく、社会全体で支えながら次世代へ繋いでいくものなのだという気づきを与えてくれました。日本とは異なる文化の守り方に触れたことは、自分にとって大きな発見でしたね」
Q5. 将来の展望は?
「これからも『好きなものを守っていくために必要なことは何だろう』という視点で文化に関わりたいと思っています。
本当は、尺八が好きなら、ただ演奏を突き詰めて、音楽だけに向き合っていられるのが理想だと思っています。しかし伝統音楽を途絶えさせないためには発信や資金、制度など、音楽以外のことも考えなければならない現実があります。
現在は、社会課題を制度や仕組みから変えていく政策起業家に興味があります。好きなものを好きと言い続けられる社会をつくるために、文化政策やコミュニティづくりの面から伝統文化を支えていきたいです」

とおるのプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都
所属:慶應義塾大学、竹之会、ビートルズ研究会
趣味:尺八、楽器を弾くこと、落語を聞くこと
特技:和楽器の魅力を伝えること
大切にしている言葉:「なりたい自分は、今何をするか」
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Photo:Nanako Araie
Text: Yuka Miyazaki






