Steenz Breaking News

飢餓が「改善しているように見える」データの落とし穴って?ユニセフの報告書が示す食料危機の現状【Steenz Breaking News】

飢餓が「改善しているように見える」データの落とし穴って?ユニセフの報告書が示す食料危機の現状【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、ユニセフによる食料危機に関する最新報告書をご紹介します。

紛争が拡大するいま、食料危機はどうなっている?

日本でも毎日のように報道される国際ニュース。ロシアとウクライナの戦争だけでなく、アメリカとイランとの対立や、イスラエルをめぐる情勢など、戦闘状態にある地域が増え、私たちの生活に影響が及ぶ場面も増えています。

こうした中で、2026年4月、ユニセフ(国連児童基金)を含む国際機関や政府機関などで構成される枠組み「食料危機に対するグローバルネットワーク(the Global Network Against Food Crises、GNAFC)」が、『食料危機に関するグローバル報告書(the Global Report on Food Crises、GRFC)2026』を発表しました。

報告書によると、依然として食料危機は続いているものの、データ上では高い水準の急性食料不安に直面する人々の数が減少しているように見えている、と言うのです。

急性食料不安と急性栄養不良とは?

食料危機を理解するために、まず、関連する用語を押さえておきましょう。飢餓を計る指標として、世界的に「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」が使われています。この分類では飢餓は5段階に分けられます。

カッサラ州で行われたユニセフ支援の戸別訪問による栄養キャンペーンで、上腕計測メジャーを使った栄養検査を受ける子ども(スーダン、2024年12月20日撮影)© UNICEF/UNI707456/Saif

食料が十分にある状態(IPCフェーズ1)では、ほとんどの人が安定した食料を得られます。IPCフェーズ2の「食料不安」と呼ばれる状況になると、多くの人が所得が維持できず、人口の5~10%が急性の栄養不良に陥っているとされます。

フェーズ2でも十分に社会不安が高まっている段階ですが、IPCフェーズ3「急性食料不安」になると危機のレベルが一気に上がります。必要不可欠な財産を売っても、限られた食事しか得られない状況になるのです。これは個人の努力や責任ではどうにもできない状態です。

危険な状態の栄養失調の治療に使う即席治療食(RUTF)。ピーナッツ、砂糖、粉ミルク、油、必須ビタミン、ミネラルから作られたペースト状の食べものになっている。(シリア、2025年4月9日撮影)© UNICEF/UNI790021/Ibarra Sάnchez/MeMo

さらにIPCフェーズ4「人道的危機」やIPCフェーズ5「壊滅的飢餓、または、飢きん」となると事態はさらに深刻化。

「人道的危機」では、極端な食料不足に直面した人々が増え始め、「急性栄養不良」となる人々が増えます。

特に子どもに多く見られるようになる「急性栄養不良」は、食事量の減少や、急激な体重減少、水腫などによって起こる低栄養の一形態です。こうした状態になると免疫系が弱り、栄養状態が良ければ治るような病気でも死亡するリスクが高まるのです。

「壊滅的飢餓、または、飢きん」の段階になると、食料だけでなく、水や医療などの基本的ニーズが極端に不足します。

2026年、食料危機の状況は?

GNAFCの報告書によると、23カ国で3,500万人以上の子どもが依然として急性栄養不良の状態にあり、そのうち1,000万人近くが重度に分類されています。これは不十分な食事や感染症の拡大、医療などのサービスの崩壊が重なった結果です。

特に、アフガニスタン、バングラデシュ、コンゴ民主共和国、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、南スーダン、スーダン、シリア、イエメンが深刻な状況であり、急性飢餓に直面している人のうち3分の2が、この10カ国に集中しているのです。

仮設テントや損傷した建物での過酷な生活を強いられるガザで、子どもたちは栄養不良の危機にさらされている(パレスチナ、2025年11月14日撮影)© UNICEF/UNI901421/Nateel

フェーズ3以上の急性食料不安を抱える国もある中で、ガザ地区とスーダンの一部地域はさらに深刻な「飢きん」にあるとのこと。これらの地域では紛争や、人道援助を必要とする人々へのアクセスが制限されています。強制的な避難によってさらに状況が悪化しており、最も深刻な飢餓と栄養不良がいまも急速に進んでいます。

今後、食料危機はどうなる?

2026年も、複数の国や地域で深刻な急性食料不安が続くと予測されています。紛争の広がりと長期化に加え、気候変動の影響、世界経済の不確実性といったことも原因のひとつです。

地震の被害が大きかったマンダレーで、すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)を食べさせてもらう2歳のシン・ミン・エイちゃん。地震後、栄養不良に陥ったが、ユニセフの支援で少しずつ回復している(ミャンマー、2025年9月22日撮影) © UNICEF/UNI869121/Htet

さらに、大きな懸念は、食料危機に対する人道支援と開発援助資金の急激な減少です。こうした活動への資金は、約10年前の水準に後退しており、効果的に人道支援をおこなうことができなくなっています。また、データ収集にも影響が出ており、信頼できるデータを出せる国が減っていると言います。

このため、過去のデータと比べて、高い水準の急性食料不安に直面する人々の数が減少しているように見えるという状況が発生。紛争や危機の拡大に伴い、深刻な状況にある地域は増えているはずですが、データ不足により反映されなくなっているのです。

カブールにあるユニセフ支援のデイケアセンターで、重度の栄養不良と診断された生後8カ月のバフラムちゃん。すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)を提供され、回復に向かっている(アフガニスタン、2025年10月23日撮影)© UNICEF/UNI885822/Karimi

食料危機は「食べ物の問題」ではない

世界各地で深刻化する食料危機。実はこの問題は単なる「食料の不足」ではありません。ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセル氏は「問題は子どもたちに必要な栄養や安全な水、そして医療などの必須サービスにアクセスするための政治的意志が欠如していること」と指摘しています。

グローバル化が進み、食料の長距離輸送も可能になっているのに、なくならない食料危機。課題解決に向けた仕組みに加えて、支援を継続する仕組みも十分ではないことがその一因です。単に食料援助を増やすだけでなく、持続的で発展性のある支援が求められています。

Reference:
Acute food insecurity and malnutrition remain alarmingly high as crises deepen, UN, EU and partners warn in new report

 

Text:Itsuki Tanaka

SNS Share

Twitterのアイコン

Twitter

Facebookのアイコン

Facebook

LINEのアイコン

LINE

Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

View More