Teen's Snapshots

現実のくだらなさで、現代人に癒しを。シュールとホラーの狭間で笑いを描く美大生【三木くけこ・19歳】

現実のくだらなさで、現代人に癒しを。シュールとホラーの狭間で笑いを描く美大生【三木くけこ・19歳】

「気になる10代名鑑」の1295人目は、三木くけこさん(19)。多摩美術大学に通いながら、シュールでホラーな漫画を描いています。疲れた現代人の癒しになりたいと語る三木くけこさんへ、漫画を描く中で大切にしていることや、創作活動の核心を聞きました。

三木くけこを知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?

ギャクとホラーを掛け合わせた、シュールだけどクスッとなるような漫画を描いています。

たとえば、先日は『ブラッディラーメン』という作品を作って。物語は、スーツ姿の男性がラーメン屋に入るところから始まります。店の奥には謎の儀式めいた仕込みがあり、得体の知れない何かが鍋に放り込まれ、気づけば客の顔が溶けている。でもラーメンは出てくる。そんな、ホラー構成のなかに、面白さもあるようなギャップを表現しています。ギャグなのに、ちょっと怖くて、不条理なのに熱い。そんな漫画だと思います。

先日、通っている多摩美術大学に編集者の人たちが来る機会があって、実際ジャンプとマガジンの担当者のより評価をもらうことができて。実際に、継続的に関わっていけたらと連絡先も交換したのですが、同時にわたしの描く漫画は面白いのかもしれないと、自信になりました」

Q2. 活動を始めたきっかけは?

原点はおばあちゃんの家で読んでいた『こち亀』『あさりちゃん』『美味しんぼ』『クレヨンしんちゃん』で、暇なときに読むのを繰り返していました。特に『あさりちゃん』は子どもでも入りやすいビジュアルで、気づいたらギャグ漫画の世界で育っていた感じです。

描く側に興味を持ったのは中学生のとき。気づいたら、構造を読み解くようにチェンソーマンを読み進めていた自分がいて。チェンソーマンは、一見すると過激で破天荒な暴力描写が目立ちますが、その裏側には普遍的な青春の痛みや、ささやかな日常への執着が計算し尽くされて配置されています。構造を理解して、自分の漫画へ落とし込めたらと思うようになりました。

ただ現実世界はそんな簡単なものではなくて、全然書けなかったのが事実です。ページ数から決めて、起承転結に当てはめて描いていたので、全然面白くなかったんです。構造をなぞることと、面白いものを作ることは、まったく別の話なんだと理解しました」

Q3. 自身のクリエイティブに影響を与えたものは?

フランスのジャン・リュック・ゴダールの映画『ウィークエンド』と、楳図かずおさんの短編集です。

『ウィークエンド』には有名な20分の長回し渋滞シーンがあって、ひたすら退屈に進んでいくのに、最後に凄惨な事故現場が現れる。あの終わり方が衝撃で。別々のものが組み合わさったときに生まれる意外性が面白さの正体だと思うようになったんです。

楳図さんの短編集は、大学に入ってから八王子のフリーマーケットで偶然手に入れた短編集がきっかけです。ホラーとして描かれているのに、なぜかわたしにとっては面白くて。たぶん楳図さん自身の天然な部分が滲み出ていて、これはギャグホラーの可能性だと気づいた瞬間でした。そこからシュールさとホラーとギャグが自分の中でつながっていきました」

Q4. 活動するうえで、大切にしていることは?

最初と最後が、ぜんぜん違う雰囲気であることです。頭の中で2枚の絵を浮かべて、前後のギャップをつなぐために物語を作るようにしていて。たとえば、甲子園の前夜に彼女に車で轢かれる球児の話が、最終的には露天で爽やかにキャッチボールして終わる。暗い出だしと明るい結末をつなぐ仕掛けを考えることが、創作の軸になっています。

もうひとつは自分でニヤニヤできるか、です。描いていてつまらないと感じたら絶対に完成しない。どれだけ時間をかけていても、強度が低いと思ったらボツにします。わたしの思う強度とは、画力や完成度とは少し違います。このコマ、Xで広まりそうか。読んだ人が悔しがるくらい面白いか。そういう、第三者の目線に晒したときに耐えられるかどうかに近い感覚です。

逆に言えば、完成させたいと思えるものは面白いものだ、という確信があって。ネットミームになりそうか、Xで画像が広まってこれ面白いってなるかな、と想像しながら描いています」

Q5. 将来の展望は?

疲れた現代人の癒しになりたいです。

深みはなくていい、瞬間的に面白くて、現実を忘れられる漫画を描きたいと思っています。シュールなギャグって浅いんですよ。テーマも複雑な物語もない。でもその浅さが現実逃避になる。読んだその瞬間だけでも、すごく楽しいと思ってもらえたらなって思います。

現実のくだらないところが、いちばん面白いと思っているので、高度な面白さだけがいちばんじゃない。くだらなさの中にある面白さを、漫画で伝えていけたらと思っています。

そしていつか、連載を持てるようになりたいです」

三木くけこのプロフィール

年齢:19
出身地:東京都八王子市
所属:多摩美術大学
趣味:おしゃべり
特技:遅刻しそうなときに走って間に合わせること
大切にしている言葉:おもしろい

Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano

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Serina Hirano

ライター/ディレクター

10代名鑑ディレクター兼ライターとして、2024年1月にSteenzへjoin。東京と伊豆の二拠点で活動中。インタビューを中心とした記事をはじめ、学生、スタートアップ企業、まちづくりの現場まで多方面で活躍。

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