The Real World

留学先は経営破綻寸前! 大寒波の中で始まった春学期 Ai in New Jersey #12【Steenz Abroad】

留学先は経営破綻寸前! 大寒波の中で始まった春学期 Ai in New Jersey #12【Steenz Abroad】

留学先が経営困難に!

わたしの留学先の大学、もしかしたら経営破綻で買収や他校と合併されるかも……。そんな緊急事態、一体誰が想像できたでしょうか。

そんな噂が広がり始めたのは去年の12月末のことでした。大学が進める財務改善計画の一環として、30人以上の教員が突然解雇されたのです。学生から人気の教員や、わたしの授業を担当していた教授までもが対象となりました。当然、教員や学生たちの間には不満が広がり、保護者からも不安の声が上がりました。そしてこのことはすぐにキャンパス中に広まりました。

突然の通達だったため、解雇された教員には、「春学期に非常勤講師として再雇用する機会」が提示されました。しかしその条件は厳しく、給与は以前より70%以上減額、さらに福利厚生もなしというもの。

大学側は、シニオリティ(勤続年数の長さ)にしたがって順に解雇したと説明しています。つまり、勤続年数が短い新しい教員がすぐに解雇されてしまうということであり、留学中の心の支えになっていた先生方も解雇されてしまうのではないかと恐怖を感じました。実際、わたしが履修していたふたつの科目の教授は着任したばかりにも関わらず解雇されてしまいました。

このことに対して、教員らは「解雇通知が直前すぎて非人道的だ」「モラルが最低レベルに落ちた」と批判。学生たちは「専門科目の教師を失い、学びの継続に支障が出る」「キャンパス全体の士気の低下が大きな痛手だ」などの懸念が多く上がりました。

冬休みが始まる数日前には保護者宛にこの内容に関する説明書類が郵送され、学生向けの説明会も設けられました。そして抱いている不安に追い打ちをかけるような、大寒波と大雪。春学期はあまりにも暗いスタートとなりました。

春学期のはじまり

わたしの留学先は2学期制。12月中旬から1ヶ月ほどあった冬休みが明け、2月にはついに2026年の春学期が始まりました。12月末に教員の大量解雇があったことで、多くの学生が他の学校に転校しました。キャリアへの影響もほとんどないため、アメリカでは、転校(Transfer)はあまり珍しいことではありません。活気のないクラス、人が減った教室……。気づけばキャンパスは、あっという間に静まり返っていました。

サンリオが大好きでよく話していた寮の友達。その部屋のドアからもネームプレートが外されており、転校したことを知りました。もっと話したかったな……。日本からのお土産、渡したかったな……。日本への一時帰国を経て、アメリカについたばかりなのに早くもしんみりしてしまいました。

大寒波の影響で初日の授業はキャンセルとなり、翌日もオンライン授業に切り替えられました。大学内の寮に住んでいるわたしでさえ外出する気力を失うほどの寒さで、いつもは賑やかな校内からも活気が消えていました。普段なら部屋の窓から多くの学生が行き交っている風景が見えるのですが、この日は融雪剤や凍結防止剤を散布する作業員の姿だけが目に入りました。

さらに驚いたのは、寮の共同ラウンジの様子です。いつもなら学生たちが会話を交わし、料理をする姿で溢れていた空間が、人影もまばらに。たまに誰かがいても黙々と勉強しているだけ。夜になると人の姿は完全に消え、静けさがかえって寂しく感じました。

みんなに「最近どう?」と聞くと「忙しい」「疲れている」と活気のない答えばかりが返ってきました。室内でさえ寒い空気が入り込む環境。それに加えて親しい教員や学生がいなくなった学期初めが、暗いムードになることは当然です。

人生はいつ何が起きるか分からない!

わたしにとって、この大学は留学先。もちろん無くなってしまったらとても悲しいですが、わたしは日本に在籍している母校があり、帰れる場所があります。一方で、ここに通う正規の学生たちにとっては卒業がかかった場所。その差は非常に大きいものでした。

教員や運営者たちの9割がこの学校の卒業生。誰もこの学校が無くなってほしいと思っているわけではありません。それでも、いまの状況を考えると1年後、5年後、10年後、この学校が存在しているのかは誰にも分かりません。そして、それはどの場所でも、どこの学校でもありえることかもしれません。わたしはこの経験を経て、何気ない日常へのありがたさを実感できました。

なんだかとても暗くなってしまいましたが、前向きに毎日を楽しもうと思えるきっかけになりました。留学に関わらず人生はいつ何が起きるか分かりません! それに、自分の人生の過ごし方は100%自分に委ねられていることに気付かされました。

留学も人生の一部。暗い気持ちの日や、退屈に感じた時は、朝起きて、頑張ることリストを書いて、実行してみる! 日常をただ消化するのではなく、少しでも新しい選択をすることで、「新しい人との出会い」や「新しい経験への挑戦」が少しずつ積み重なっていくと思いました*・❤︎

Ai(渡邉亜衣)のプロフィール

北極に魅せられた国際活動家であり、音楽を軸に生きる表現者。17歳で訪れたグリーンランド最北のカナック村での経験をきっかけに、気候変動や地域社会への関心を深め、2023年にはドバイで開催された「COP28」に登壇し、現地の声を国際社会に届けた。音楽の分野では、国内外でライブを企画・出演しながら、社会との接点を模索。現在は国際バカロレアの知見を活かし塾講師として働く一方、大学で自らの活動をさらに深めている。

SNS Share

Twitterのアイコン

Twitter

Facebookのアイコン

Facebook

LINEのアイコン

LINE

Ai

2005年生まれ、神奈川県出身。立教大学 Global Liberal Arts Program 在学中。高校時代にはグローバルビジネスコンテストで世界一を受賞し、さらにグリーンランド最北のカナック村での体験をもとに、2023年にはドバイで開催された「COP28(国連気候変動枠組条約締約国会議)」に登壇するなど、国際的な舞台で活動を広げてきた。一方で、音楽分野では全国表彰の受賞や国内外でのライブ主催を行い、社会課題と音楽を結びつける表現に力を注いでいる。芯のある中音域とソウルフルな表現力を強みとし、演歌からゴスペルまで幅広いジャンルを歌いこなす。国際バカロレア(IB)資格保持者で、現在は留学生ライターとしても活動し、2025年夏からニュージャージーに留学している。

View More